一見軽いタイトルだけど、ためになる一冊:松本利明、「ラクして速いが一番すごい」ダイヤモンド社

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「ラクして速いが一番すごい」はタイトルだけ見れば軽いですが、筆者の松本利明氏の経歴を見れば、途端に重厚感が増します。松本氏はマーサー、アクセンチュアといった世界的な外資系コンサルティング会社で、「人の目利き」を一貫して行ってきました。24年間で実に5万人以上のクビ切りを手伝い、その一方で、6000人を超えるリーダー・幹部社員を選抜してきたのだとか。その過程で効率的な業務のコツを体得したということで、経験値に裏打ちされた言葉が聞けそうです。順にそのエッセンスを追っていきましょう。

目次

コミュニケーションのムダな努力を減らそう

ムダな努力には大きく5パターン あると筆者は言います。1:一生懸命頑張るけれどもやり直しが多い 、2:すべてに全力投球で疲れ果てる、 3:責任感を持ちすぎて仕事を抱えすぎる、 4:根回しに労力と時間を掛けすぎ疲弊する、 5:上司の指示通りにやるが結果が伴わない、の5パターンです。要するにメリハリが大切なのですが、業務フローの勘所を押さえて効率的に仕事をするには、改めて力の入れどころと抜きどころを考えて動く必要があります。

とりわけ資料作りは、ムダな差し戻しを押さえておきたいところです。「資料 は60点の状態で出す」という方法は、私自身も活用させてもらいました。あえて60点で(たたき台を)出すことで3つのメリットがあります。すなわち、 「1:方向性を確認できる」「 2:相手に突っ込ませてゴールを明確にする」「 3:後からひっくり返すことが仕事と考える意地悪上司対策」の3つです。これは確かに有効な方法の一つでした。ひな形やたたき台を早めに出しておいて、ガンガン突っ込んでもらえば、それはそれで整理すべき論点が明確になるし、スケジュールに余裕を持たせることができます。じっくりドン!と出すよりも、相手の都合を伺いつつも軽快に資料作成フローをうまく回すほうが効率が良くなりますね。

さらに、コミュニケーションを円滑にするには、「正しい」には2つある点を理解することも重要です。つまり、「客観的に正しい」、「相手が重要と思ってる順番に沿って正しい」 の2つを峻別して、相手の思いを把握する必要があります。そのためには、ロジカルに話すよりも、たとえば「重要な事は何ですか?」と率直に聞いてしまった場合のほうがうまくいく場合も多いです。相手の思う正しさが何なのかを掴まずに、非の打ち所のない正論を言っても、余程理性的な人を除いては反感を買うだけです。

こまめな報連相だけでなく、「空・雨・傘」で確認しようという筆者の提言は、いかにもコンサルティング業界に関わりのある人らしいなと思いますが、話を伝える段取りとしてやはり大切です。「空・雨・傘」とは、「空を見ると曇ってきた(事実)→雨が降りそうだから(洞察)→傘を持っていこう(打ち手)」といった具合に、あたかもストーリーのようにして伝える方法です。聞く側の理解を促すために、話法としても、文章やプレゼン資料としても使いやすい伝え方です。「事実を伝える時(空)に」、「どうなりそうか?(雨)」、「ゆえに、どんな打ち手やどんな行動をすればいいか(傘)」と順序立てて考える習慣は、仕事や日常のあらゆる場面で応用が聞きます。

早い仕事をするために、誰でも出来る準備とは?

「1日の仕事は6時間想定」というのは、「働き方改革」を行ううえで基本的な心構えかもしれません。予期せぬ仕事はいつでも降りかかるもの、しっかりバッファを作れるよう前倒しでスピーディに動く癖をつけましょう。

スケジュール管理のコツに突いては、2つのアイデアを筆者は提案しています。「月曜だけでなく、水曜の昼にスケジュールを練る」のは「今週の進捗と来週の予定を考える時間を設ける」意味があります。もう一つの「金曜の夜は早めに切り上げ、土曜日の午前の時間を有効活用できるようにする」ことも、休日のクオリティが上がり、平日の仕事に対するモチベーション管理に間接的効果があると言えそうです。

身の回りの整理も効率的な業務には重要です。一説には、人生の中で「約半年」の時間を人間は捜し物に費やしているそうです。たかが捜し物の時間とはいえ、1日10分として、塵も積もればとんでもないムダな時間になってしまいます。特に、デジタルデータの管理は非常に厄介です。筆者はデジタルデータのフォルダ管理について3つに分けろ!と言っています。私も実践しています。具体的にどう分けるか、逆に捨てていいものとは何かは以下のとおりです。

デジタルデータは3つのフォルダに分ける

・「Process(作業中)」
・「Final(納品)」
・どうしても残したい資料は「Others」 ただし1年経ったら覗かずに捨てる

これ以外は捨ててOKというもの
1:法律・契約関連、クライアントへの貧した資料や備品
2:「言った・言わない」にならないよう言質を含んだ重要なメールや書類
3:納期、量、価格といった仕事の受発注に関する書類

嫌な仕事・得意な仕事にどのように向き合うか?

嫌な仕事、面倒な仕事の依頼、困りますよね。どう受け流すかも含めて、筆者の提唱する5ステップで、あなたと相手の業務を同時に効率化していきましょう。
1:断る場合でもまず、「わかりました」と言う
嫌な仕事でも、まず「わかりました」と言うのは、相手の言葉を受け止める意味があります。「クッション言葉」のあるなしは、相手の印象においても重要です。松本氏はこのように書いています。『受ける・受けないの前に「依頼内容はわかった」といえば、相手の心は一旦落ち着きます。受ける前提でまずは納期を聞き、自分の状況を整理する。最初に相手を受け入れながら自分の意見を主張する。断る場合でも、代替となる解決策を見つければ相手は怒らないので最低限のやりとりですみます』

2:いつならできるかを言う
3:予定を確認した上で、いつまでに返事するかを言う
2、3のステップは実際の応答ですが、自分自身の都合や自分のチームも都合があります。他部署からの依頼の場合、上司の確認が必要など、仕事を受ける・受けないを即答できない時があるわけで、相手も不安があるわけですから、しっかりと整理したうえで伝える必要があります。

4:他の人を紹介する
5:優先度を確認する
4、5のステップはやや応用編です。よりうまく出来る、あるいは早く出来る人の都合が良さそうであればそちらに受け流しましょう。さらに、優先度と分担を逆提案するというのも、仕事が前に進みます。対応するのがやや難しい場合でも、次善策を相談する流れに持っていくことで、どうすれば依頼された仕事を早く仕上がるかを一緒に考える方向にお互いの仕事のためになります。

やりたいことよりも、求められること(向いている仕事、勝てる仕事)に注力するのも、業務効率化に欠かせない視点です。緊急度・重要度だけでなく「向いている」「成果が出る」仕事の2軸も重要と筆者は言います。「向いている」とは持ち味、意識しなくても人より楽して早くできることです。「成果が出る」とは、仕事として評価され、結果を出せることです。「ありがとう」をたくさん貰える仕事をするためには、この2つをしっかり理解して得意な強みを生かして、立ち回りましょう。浮いた時間は、さらなる業務効率化に資する前向きな仕事に使いたいものです。スリーエムでは時間の15%を好きな研究に使っても良いという不文律があるそうですが、仕事の10%をさらなる効率化のための投資の時間に回したいものですね。

以上で、「ラクして速い」仕事をするための方法のエッセンスをご紹介してきました。他に本書で印象に残った点は、立ち居振る舞いの点で実力よりも先に「できる」という認知を作るという言葉です。具体的には以下の6つの方法があります。
1:真っ先に発言する
2:姿勢を正し、はっきりとした声を出す
3:お辞儀が一番深く、長い
4:リアクションが速い
5:朝に強い
6:哲学と世界史を学ぶ

この6つは、社会人の基本動作に、生活習慣と教養が加わったものですが、この6つをバッチリできている人って、はたして世の中にどれほどいるでしょうか?「ラクして速い」仕事をするためには、品位と意欲があり、内実伴ったビジネスパーソンという評価や評判が損になることはありません。あなたが「ラクして速いが一番すごい」状態になるには、仕事に取り組む姿からまず変えてくことで、良いキャリアが開けていけそうです。

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この記事を書いた人

・現役世代を元気にしたいとの思いで新ブログを立ち上げ!
・本は2000冊以上読破、エッセンスを還元いたします
・金融機関で営業・調査部隊双方を経験。
・バックグラウンドは歴史とMBA

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