「ハニーレモンソーダ」はなぜ面白いのか？（結論：描写の○○性に優れた上質な△△事、△△事だから□□できる）

2024-03-01

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村田真優先生の「ハニーレモンソーダ」は21年5月時点で700万部を突破しており、女子高生の間でも「呪術廻戦」、約束のネバーランド」に次ぐ堂々の3位です（LINE調査）。りぼん愛読歴21年目の私も毎号楽しみにしています。ですが、正直な話「ハニーレモンソーダ」（村田真優）はなぜこうも面白いのでしょうか?その理由は3つあると考えます（ブログ統合のため2021年執筆記事の再投稿です）。

「ハニレモ」が面白い理由：描写の一貫性に優れているから

「ハニレモ」は、主人公・石森羽花と素敵な男子・三浦界の物語で一貫している点が優れている点です。とにかく、わかりやすいです。長期連載ですと、脇役の話にぶれることもありますが、「ハニレモ」はぶれません。シンプルです。

三浦くんは、口数は少なく、要所を抑えた言葉で羽花と読者の心をときめかせます（三浦界・名言まとめ17選）。三浦くんは、察しよく、手を差し伸べてくれる一方で、信じるところは信じて黙って見守るときもあります。「石森係」ではありますが、だからといって、過保護でもありません。

羽花と三浦くんの関係は、「守り、守られる」面が最初は強いですが、羽花は三浦くんに依存せず、成長ストーリーにしっかりなっています。頼りにしながらも自分の足で立ち上がろう、チャレンジしてみようという気概なのも、応援したくなっちゃうポイントですね。

「ハニーレモンソーダ」のモチーフは、三浦くん自身と物語の一貫したテーマ、作品の読後感を象徴する言葉として秀逸です。昨今は無闇矢鱈と題名が長い作品が多いなかで、センスの良さが際立っています。作品を貫く一本の柱を持っている。「ハニーレモンソーダ」の特長です。

「ハニレモ」が面白い理由：上質な綺麗事、絵空事だから

マンガは綺麗事、絵空事だからこそ意味があります。なぜなら、人々が求めるのは綺麗事、絵空事だからです。ほどほどのリアリティは読む上でほしいけど、基本的に求めているのはリアルそのものではありません。

とはいえ、変わるきっかけと導いてくれる人は物語を広げてくれますが、行き過ぎるとご都合主義との見方にもつながります。「ハニレモ」は正直言って、素敵な世界です。だからこそ、物事がうまく行き過ぎているようにも見えてしまう瞬間はあります。本編でも、作者はメタ的な自己批判を本編に織り込んでいます。

「…ここは、綺麗事と絵空事を集めて煮詰めた感じ
　生暖かくて超居心地悪い（6巻22話）」

「ハニレモ」では、好きな人の元カノ、両親との関係、新たな登場人物の男女、相手の気持ちがときにわからないなど、様々な困難が訪れます。複雑な感情が絡み合いながらも、どうにか乗り越えていく話は元気や希望をくれます。大人も「ハニーレモンソーダ」で酔えるんです。もしかすると、りぼんっ子たちよりも、リアルで疲れた大人たちや過ぎし日の青春を懐かしむ大人たちに響く作品なのかもしれませんね。

「ハニレモ」が面白い理由：共感できるから

当たり前かもしれませんが、読む人に共感されたからこそ、700万部も売れたはずです。「ハニレモ」は突飛なストーリーではなく、古典的とすら言える王道の少女漫画です。古典的で王道、スタンダードで正攻法の作品だからこそ、たくさんの人に響いたんです。「そう、それが読みたかったんだ」とね。

たとえば「ハニレモ」の筋書きを一言でまとめると、「地味で大人しく過去にいじめられていた女の子が、クラスの人気者の男の子によって変わっていく」。あまりにありふれたあらすじです。

けれども、「地味でコンプレックスを持ってる女の子」という石森羽花のキャラクター像に、自身を重ねて見やすいという人は多いのではないでしょうか。自信満々でやることなすことうまくいっている人はそうはいません。「りぼん」の作品でも、ありふれたキャラクター像ですが、だからこそ、幅広い読者に共感を生んだのでしょう。

特に序盤に顕著ですが、石森羽花は三浦くんたちの会話に入れません。だから、三浦界と友達の会話に対して、石森羽花がどう思うか、どう感じるかを内面の独り言で表しており、話の進行のとっかかりになっています。内気な人ほど、心のなかではおしゃべりです。だって、内なる会話が活発すぎて、急には声が出ないのですから。そりゃあ、「ご、ごっ、ごぼう！」になってしまいます（笑）

戸惑いながらも、自信の殻を破るための第一歩を踏み出し続け、ときに空回りしながらも、三浦くんはじめ周りの人の助力に助けられて成長を続ける羽花の姿、ついつい応援したくなっちゃうんです。

以上で大きく3つの理由にまとめてみました。ハニーレモンソーダの面白さの源泉は、「描写の一貫性に優れた上質な綺麗事、絵空事だから共感できる」点にあります。良質のフィクションは心のエナジードリンク。甘く爽やかな読後感、あなたも味わってみませんか？

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