「Think right」は、「Think clearly」、「Think Smart」と共に、ロルフ・ドベリ氏の”考え方”「3部作」です。「誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法」の副題のとおり、思考の罠に陥るのを回避するアイデアが盛り沢山です。普通に生きていると、人間は様々な思考の罠に陥るように出来ています。
たとえば、確証バイアスがその一例です。確証バイアスとは、仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のことを言います。特にSNSの時代には、私達は思考を省略しがちです。知らず知らずのうちに自分の意見や信念に合致しない反対の証拠には目もくれず、自分の推測の正しさを証明するものばかり見てしまうのです。
では、どうすればよいかと言うと、反対の証拠を見つける習慣をつけることが対処法です。言い換えると「自分の推測の誤りを証明するもの」を見つける習慣をつけることです。自制心を要するのはたしかですが、誤りの思考のなかで生きていくよりはいいでしょう。論理構築やディベートのトレーニングにもなりますし、安易な判断による様々な失敗を防ぐことが出来ます。
この他にも、様々な思考の罠が紹介されています。スポットライトが当たるのはいつも「成功者」であるため、「自分もうまくいく」と成功への見通しを過大評価してしまう(生存バイアス)。うまくいった人の話には再現性がどの程度あるか、検証してみましょう。行動してもしなくても受けるダメージが同じなら、行動しないこと(不作為)のほうが、罪が軽いと感じる傾向がある(不作為バイアス)というのも、保身を考えるなら何もしないのが一番だと考えがちな人間の本性を表しています。解決のための手立てを考え、実行する習慣をつけましょう。
また、人は目先のことほど高い価値を感じ、正常に損得勘定ができなくなるというのも典型的な思考の罠と言えるでしょう。人は目先のことに高い価値を感じ、期限が到来するタイミングによって矛盾した決断を下すことがあるからです。「マシュマロ・テスト」の紹介で書いたように、目の前のことを我慢する力は人生を左右するのです。
幸せを長く感じたいなら、通勤・騒音・慢性的なストレスを避け、車・家・ボーナスへの期待を無視して、できるだけ多くの自由な時間を手に入れ、自分の意思で行動する必要があるというのも、即物的ではありますが、実際的な幸せをめぐるアドバイスと言えるでしょう。このように、人間の思考や行動に見られる一定の傾向をあらかじめ知っておくことで、著者は自分に有利な決断ができるようになったと語っています。「Think right 誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法」は”転ばぬ先の杖”なのです。