心の持ちようであなたの人生を変える3つのポイント:「向上心」サミュエル・スマイルズ、知的生き方文庫

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「向上心」が邦題ですが、原題は「Character」なので「人格」と言い換えてもいいでしょう。実例集なのは「自助論」とほぼ同じですが、若干語り口がマイルドになっており、「心の持ちよう」をしっかり丁寧にレクチャーしてくれる印象です。名言ベースで要点を見ていきましょう。大きく3つのポイントがあります。

目次

①明るく朗らかに過ごすことで心の平穏を保とう

『われわれには意志と行動の自由がある。それは本当にすばらしいことであるが、不名誉を意味することも 往々 にしてある。それは、この自由をどのように使うかにかかっている(略)物事の明るい面を見るか、暗い面を見るかを、われわれは自分で選ぶことができるからである。』

「ニュースとは歪んだ鏡」という言葉があります。今日も様々な人の努力で無事平穏な日でしたでは、ニュースになりません。人々の目を引く、不倫などの不祥事、不信の企業業績、表層しか伝えないコロナウイルスの感染者数などなど……テレビだけを見て鵜呑みにしていれば、心身に不調をきたすのが普通だとさえ思えるくらいです。世界トップクラスのテニスプレイヤー・ジョコビッチが、食事中に決してテレビを見ない理由は非常に的を射ています。「テレビに前向きな話などほとんど出てこないではないか」。物事の明るい面を見るか、暗い面を見るかを自分で選べるということを思い出しましょう。

『世の中は自分の選んだとおりに姿を変えてくれる。世界を本当に自分のものにするのは、明るく朗らかな人たちだ。この人たちこそ、毎日の生活の中に喜びを見出し、享受することができるからである。一方、年中いらいらと不安にさいなまれ、満足することを知らない性格の人は、不安や苦労に押し流されやすいために、幸せや心の平和を手にすることはできない』

もちろん過剰な楽観に偏ってはいけませんが、程よく健全な楽観主義は、人生におけるストレスの程度を和らげてくれることでしょう。適度の緊張は重要ですが、良い方向に目を向けるために、明るく朗らかでいることは重要な資質と言えそうです。

『満足感を得るための秘訣は、小さな悩みにくよくよしないことである』『(略)ささやかな喜びの芽を進んでさがすことである。残念ながら、大きな喜びを手に入れるには長い時間がかかるからだ」 これは、広い交友範囲を持っていた政治家で評論家リチャード・シャープの言葉である』

幸福や満足感についての要諦を述べている一節ですが、これはバートランド・ラッセルの「幸福論」にもつながる箇所です。「人間、関心を寄せるものが多ければ多いほど、ますます幸福になるチャンスが多くなり、また、ますます運命に左右されることが少なくなる。かりに、一つを失っても、もう一つに頼ることができるからである。」ともラッセルは述べています。あら捜しに一生懸命になるよりも、物事の明るい面や良いところを探す習慣が、幸福感の礎になりますし、興味・関心の幅の広さは幸福の可能性を高める手段でもあります。

『勝手に災いを予測し、つくり出していたのでは、それに打ち克つことはできない。いつも災難を背負い込んでいては、いつかはその重みに押し 潰されてしまう。災難に見舞われたら、希望を捨てずに勇敢に処理しなければならない

セネカの「恐怖の数のほうが危険の数より常に多い。」、チャーチルの「恐怖は逃げれば倍になるが、立ち向かえば半分になる。」という名言にそれぞれ通じますね。予測は大切ですが、過度の悲観や心配し過ぎは逆効果です。もちろん、いざというときにはしっかり災難に立ち向かわなくてはなりません。適度な楽観と腹をくくるのバランスが大切です。

②仕事と家事を通じて人格を高める

仕事は、行動力あふれる人格を養うためにはいちばんいい方法である。働くことによって、従順さや自制心、集中力、 順応性、根気強さなどが 芽生え、鍛えられていく。そして、それぞれの専門技術を伸ばして器用にこなせるようになるだけではなく、日常起こるさまざまなできごとをその場に即して、巧みに処理するコツも身につけられるのである。』『自分の仕事に対して持つ愛情こそ、低級で下品な趣味に走るのを防ぐ最善の予防措置である。さらに、仕事を愛することは、何でもない悩みや自己愛にふけった結果生ずるいらだちが解消される最良の手段であると言い換えられる』

仕事から得られる能力・スキルには枚挙にいとまがありません。一方で、スマイルズ自身は医者を経て著述業に専念したのですが、仕事だけでなく日常の出来事にも目を向けています。

怠惰は人間を堕落させ、国力を低下させる。怠け者が社会的に名を上げたためしはないし、これからもないだろう。怠け者は丘をよじ登る努力もせず、困難に立ち向かおうともしない。怠け者は人生で失敗をくりかえす。何をやっても成功しないのは当然である。怠け者は何の役にも立たない。陰気な顔で不平ばかり言う哀れな人間で、社会にとってはお荷物である。邪魔者であり、迷惑千万な存在なのである。』

相変わらず怠惰に厳しいスマイルズ氏。勤勉と怠惰と聞くと、松岡禎丞氏の怪演で知られるあのキャラを思い出してしまいますが、今一度勤勉の価値に目を向けてみる時なのではないでしょうか。努力しないで何かが出来ることは素晴らしいように見えるし、実際のところそれが出来る人は裏でとてつもない努力をしているのかもしれません。どの学校に行くかで、人生において勤勉の価値がどの程度高いものになるかは、個人差はあるでしょう。しかし、今ここから勤勉であろうとすることは出来ます。

『仕事に没頭することはこの組織だった方法をもっとも効果的に教えてくれるので、人格形成にもきわめて役に立つ。仕事に必要な能力は、毎日のできごとを通して他人と積極的にふれ合うことでますます伸びていく。その仕事が家庭のやりくりであれ国家の運営であれ、変わりはない。 また、有能な主婦は同時に有能なビジネス・ウーマンでなければならない。こまごました家事を整えて管理し、財布のひもをしめてきちんと計画を練り、あらゆる家事を自分のルールに従って賢明に処理していかなければならない。能率的な家庭管理とは、勤勉さや組織だった方法、道徳的訓練、慎重さ、予測、実務能力、洞察力、そして統率力を意味する。これらはみな、たとえどんな種類の仕事でも、それをうまくこなしていくには欠くことのできない要素なのである。

誰の言葉か忘れましたが、「仕事をマネジメントできない者は、家庭をマネジメントできない」という言葉があります。仕事や家事は表裏一体なのです。

③度量の大きな人物になるために意識したいこと

『詩人リー・ハントが「紳士的な聖人」と呼んだ、反宗教改革の指導者であるフランスのカトリック司教フランソワ・ド・サールは、「気難しい口調で真実を述べるくらいならば、沈黙を守っているほうがましだ。おいしい料理にまずいソースをかけるようなものだから」と言っている』

下手に正論は述べないほうが良いかもしれません。というのは、言葉や言い方が上げる効果が、どのようなものかを考えなければならないからです。ここぞという状況を除いては、多弁よりも沈黙がまさる場面は存外多いものです。

思慮分別のある人とは、日常生活で起こる現実的なできごとを公平に判断し、思いやりのある慎重な行ないのできる人をさす場合が多い。すなわち、教養も経験もある人はみな心が広く、自分を抑えることができる。愚かで心の狭い人はいずれも執念深く、かたよった考え方しかできないのだ。』

思慮分別は失われた美徳なのかもしれませんが、現代人が取り戻すべき美徳です。党派性からものを考えがちな習性はSNSが発達した現代の病理ですが、目の前の出来事にせよ、世界の様々な出来事にせよ、多様な観点からの判断をしたいものですね。たとえば、安倍首相がやることも、野党がやることも何でも間違いだというわけではありません。

器の大きな人は、持っている実用的な知識にふさわしく他人の欠点や弱みを大目に見てやることができる。人格形成の段階において身につくはずの環境をコントロールする力と、あやまちや誘惑に陥りやすい人の抵抗力の弱さを考慮に入れてやるゆとりがあるのだ。 ゲーテは言っている。「私がこれまでに見てきた罪悪は、どれもみな一歩まちがえば自分も犯していたかもしれないものばかりだった」

他人の欠点や失敗などは目につくことがありますが、はたして自分に置き換えたらどうでしょうか。同じ状況だったら、同じ過ちをするかもしれませんよね。どうしたらそうならないか、どう工夫したらいいだろうか、同じ立場ならどうするべきだったか、などに意識を向けるほうが建設的です。

『ほどほどの自制心を持たない人間は、仲間にとって我慢のならない存在である。いつも周囲に厄介ばかり起こすので、誰も進んでつき合おうとはしない。大勢の人が、自制心がないばかりに世間を狭くして出世をはばまれ、根性のねじけた思いやりのない性格のために、成功を手にすることができずにいる。反対に才能は劣るかもしれないが、自分を抑制し、辛抱強く冷静さを失わぬように努めるだけで、成功への道を切り開いている人たちがいるのである。

マイナスの感情を撒き散らして雰囲気を悪くする人って、色んなところにいますよね。自制心をどれだけ持てるかが、そうした人を同じにならないコツです。マイナスの感情が心のうちに芽生えたとしても、それは自分自身が内面で向き合うべきであって、わざわざ外に出してマイナスの感情を世界に増やす必要などないのです。結局、それはあなたにとっても損なことなのですから。

『偉大なる無神論者アリストテレスが描いた度量の大きな人間像は、言葉を変えれば真のジェントルマンの理想像とも言えるが、これは現代にもそのまま通用する。「度量の大きな人間は、幸運にめぐり合っても不幸にあっても極端な行動はとらないものだ。成功したからといって 有頂天 にならず、失敗したからといって立ち直れないほど悲嘆にくれたりもしない。危険は避けないが好んで求めもしない。心にかかることがほとんどないからである。口数は少なくしゃべり方もゆっくりしているが、必要とあれば思ったことを包み隠さず大胆に発表する。自分の実力を信じているから他人の長所をすぐに認める。侮辱を受けても無視する。自分や他人についてとやかく語ったりしない。自分がほめられたり他人が傷つけられたりするのを好まないからである。つまらぬことですぐにわめき散らしたりせず、人の助けを求めたりもしないのである

度量の大きな人物の特徴は、中庸、あるいはバランス感覚です。たとえば、あなたの尊敬する上司を振り返ってみてください。怒鳴ったり、喚き散らしたりして、怒りで人を動かそうとしているでしょうか?まさか、そんなことはないですよね。情動制御の能力に長け、人を見て的確な指示を出すような人物であるはずです。順境の時も、逆境に際しても、平静さを保ち、やるべきことをやるような人物が目指すべき人物と言えるでしょう。

『人生という学校で経験を積んだ生徒は、どの程度のものを得ただろうか? 経験を積んでどんな利益があっただろうか?  精神を鍛えて何を手に入れただろうか? 知識や勇気や自己抑制の力は増しただろうか? 恵まれた生活の中でも誠実さを失わず、自分を抑え節度を守って暮らしただろうか? それとも他人の気持ちを無視して、自分勝手な一生を送ったのだろうか? 試練と逆境から何を学んだのだろうか?ただいらいらと気難しく、不平ばかりこぼしていたのだろうか?』

この一節は、「振り返ってみる」リストとして有効です。日々の生活や仕事におけるチェックリストとして活用すると、人格を磨く良い手助けになってくれることでしょう。

『経験から得たものは、当然、日常生活の中に何らかの形となってあらわれる。生活すなわち時間である。経験豊かな人は、時間をよき協力者として頼ることを知っている(略)「時間と私が組めば、怖いものはない」とは、栄華をきわめたルイ十四世の 宰相 を務めたマザランの金言だった。』

「時間と私が組めば、怖いものはない」、かっこいい名言ですね。情動の制御とは、タイムマネジメントでもあります。時間だけは誰にでも平等に与えられる資産です。時間を資本に、何を生み出すかはひとりひとりの意志の力にかかっています。

『不幸は必ずしも苦しいものではない。一方では苦しみにつながるが、ある意味では幸せにつながる。悲しいものではあるが、修復できるし、またとない鍛練ともなる。しかし、われわれ人間は、鍛練となる面を見逃してしまいがちである。しかし、こうも言えるかもしれない。悲しみや苦しみはある人にとっては成功するために不可欠な条件であり、その才能を思う存分発揮させるのに必要な手段である

『さんさんと太陽が輝いて日陰のない一生、あるのは幸福ばかりで不幸のない一生、楽しみばかりで苦しみのない一生──これらは少なくとも人間の一生とは呼べない。 最大の幸福とは、もつれた糸のようなものである。幸福は悲しみと喜びの組み合わせで、悲しみがあればこそ喜びは大きくなる。不幸の後には幸せがあり、われわれを悲しませては、さらに大きく喜ばせてくれる。死そのものでさえ人生をより美しくする。死は、地上にいる間、われわれをお互いにより深く結びつけてくれるからである。』

この2つの箇所は私の好きな小説、デュマの「モンテ・クリスト伯」のラストシーンの言葉に通じるものがありますね。スマイルズももしかすると読者だったのかもしれませんが、優れた教養書と小説に共通点があるのは不思議ですね。

「マクシミリヤンさん、わたしはあなたに、わたしのあなたへの行動の真諦をお知らせしましょう。それは、この世には、幸福もあり不幸もあり、ただ在るものは、一つの状態と他の状態との比較に過ぎないということなのです。きわめて大きな不幸を経験したもののみ、きわめて大きな幸福を感じることができるのです。マクシミリヤンさん、生きることのいかに楽しいかを知るためには、1度、死を思ってみることが大切です。では、なつかしいお二方、どうか幸福にお暮らしください。そして、主が、人間に将来のことまでわかるようにさせてくださるであろうその日まで、人間の叡智はすべて次の言葉に尽きることをお忘れにならずに。待て、しかして希望せよ!」

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この記事を書いた人

・現役世代を元気にしたいとの思いで新ブログを立ち上げ!
・本は2000冊以上読破、エッセンスを還元いたします
・金融機関で営業・調査部隊双方を経験。
・バックグラウンドは歴史とMBA

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