知的ハードワークに挑め!ただし、技術を持って:「外資系コンサルの知的生産術」 山口 周、 光文社新書

  • URLをコピーしました!

知的生産という仕事の難しさ、タフさに挑む人に役立つ一冊。著者は「思考の技術」とは、「行動の技術」であると言います。知的生産性というのは「思考の技術」そのものよりも、「情報をどう集めるか」とか「集めた情報をどう処理するか」といった「行動の技術」、いわゆる「心得」によってこそ大きく左右されます。では、何をやるべきなのでしょうか? その答えは「知的生産の戦略策定」です。どのような知的生産物を生み出せば、この局面で勝てるのか?という点についての見通しをつけること。ここが、知的生産全体の成否を分ける前半での大事な勘所となります。

この考え方の背景は、まず、私たちが行う知的生産には基本的に経済的な対価が支払われている点にあります。全てのホワイトカラーワーカーにいえることですが、私たちは知的生産物という商品を生産して誰かに売っています。つまり、広義のマーケティング活動をやっていると考えることができるのです。

マーケティングにおいてもっとも重要なポイントは差別化です。自分の知的生産物を、どうやって他の知的生産物と差別化するのか。この点を、まず考える必要があります。さらに加えるなら、一般に差別化というと「競合との差別化」が意識されがちですが、知的生産においては「顧客がすでに持っている知識との差別化」が一番大きな問題になります。 ここでいう顧客とは「知的生産物」の受け取り手という意味です。したがって一般的な意味での「顧客」である取引先に加え、知的生産物の発注者である上司や他部署の人も含まれると想定されます。また、知的生産の戦略を検討するときに方向性を整理するには、横軸に「広さ」を、縦軸に「深さ」を取って、相手側の問題意識の枠組みを整理した上で取り組む必要もあります。

作業工程は期日が設定されて初めて設計することができます。「なる早で」などという指示を出されても作業工程の組み立てはできないですが、現実にはこういう指示を出す管理職やリーダーが少なくありません。これは端的にいえば「仕切り」の問題です。顧客側はいつまでに、どれくらいの品質の知的生産物が、どの程度のコストで出てくると期待しているのか、その期待値と現実とのあいだにあるギャップをどうすり合わせていくのか、という問題です。よく「あいつは仕切りがいい」とか「あいつは仕切りが悪い」という言い方をしますが、仕切りというのは要するに期待値コントロールのことです。だからプロジェクト開始の段階で、顧客のスピード、品質、量に関する期待値を制約条件の中で満たせない、と感じたら、そのままプロジェクトをスタートさせず、まずは顧客と制約条件の調整について話し合っておくのが良いわけです。

では何を相談するか?相談をするときは、納期・クオリティ・コストの三つについて、妥協できる要素が何かをはっきりさせる必要があります。具体的には、アウトプットクオリティは落とせるのか? 期日を後送りにできないか? 別プロジェクトの予算あるいは人手をこっちに回せないか? という三つの論点について相談しましょう。知的生産における失敗は、知的成果物の品質で決まるのではなく、知的生産における成功・失敗はあくまでも「顧客の期待値と実際の成果物とのギャップ」によって決まります。つまり、知的生産におけるトラブルというのは一にも二にも、期待値と成果物とのギャップが大きいために発生しています。プロというのは常に、求められている水準をギリギリ最低限の労力でクリアする人たちなのです。置かれている状況、作業を依頼する人の力量、扱うテーマの難易度に応じて適切なミニマムラインの設定を行うのが、管理職の大事な仕事だということを忘れてはいけません。

情報のプロセッシングとは、一言でいえば、「集めた情報を分けたり、組み合わせたりして、示唆や洞察を引き出す」ことです。ここで重要になるのが「文脈に沿っている」点です。集められた情報から示唆や意味合いを引き出すというのは、乱暴にいえば無限にできることですが、知的生産のプロセッシングにおいて重要なのは、「その局面において重要な意味合いや示唆だけを引き出す」ということになります。もっと簡単に言うと「じゃあ、どうすればいいの?」という答えにつながるような示唆や洞察を引き出す、ということです。

知的生産に従事する立場にある人であれば、「常に行動を提案する」という意識が重要です。「行動を提案する」というのはつまり「ではどうするべきか?」という問いに対して解答を出す、ということです。そもそも、ビジネスの世界に限らず、わたしたちが知的成果として世に訴えられる情報は基本的に三種類だけ。すなわち、その三つとは「事実」「洞察」「行動」です。かつて世の中に生み出された知的考察の全てが、これらの三つどれかに分類されます。

最後の最後、では、いま、ここにいるわたしは、これから何をすればいいのか? どう生きるべきなのか? という問いに答えを出すことがもっとも重大であって、それになんらかの答えを出せないようであれば、そんな「知的生産の技術」は無価値とさえ言えると筆者は述べます。なんらかの形で知的生産に従事する際には、常に、最後は「では、どうすればいいのか?」という問いに対して答えを出すのだ、という気概を失わないようにすることが肝心です。

だから、まずは仮説を作り、ポジションを取って意見を言う必要があります。知的生産の初期段階において、たとえ情報が不足しているように感じられたとしても、現時点でのベストフォートとして明確なポジションを取る―つまり、仮説をたてるのです。 もちろん、このポジションはその時点での「仮の答え」ということでしかありません。現時点での「仮の答え」でしかないものに対して、明確なポジションを取るというのは奇異に聞こえるかも知れないが、では逆に考えると、その「仮の答え」は、いつまで待てば「最終的な答え」になるのだろうか ?いうまでもなく、いつまで経ってもそんなタイミングは来ないのだ。経営はアートであって自然科学ではありません。ビジネスの世界には不変の法則などというものは存在しないし、プレイヤーや顧客の状況は川の流れのように常に変化していて流動的です。そのような流動性の中にあって「最終的解答」などというものを探し求めるのは無茶を通り越しています。ポジションというのは常に、その時点でのベストエフォートにならざるを得ないのです。

もちろん、どんなにビジネスセンスに優れた人であっても、さまざまな情報が集まってくる過程で、当初設定したポジション=仮説にほころびは出ます。しかし、これは仮説の進化にそのままつながるから肯定的に評価するべきことなのです。つまりポジションを一度取った上で、新しい情報がそれを反証するのであれば即座にそのポジションを捨てる、という柔軟さ、腰の軽さが必要だということです。

加えて、ビジネスにまつわる定説の多くは「誤り」であるか、少なくとも「ケースバイケース」であると思っていた方がいいでしょう。ビジネスにおける定説、とわざわざ断ったのは、自然科学と社会科学では定説のたしかさがまったく異なるからです。自然科学の場合、論理的に証明された定説はそれなりに強靭ですが、社会科学の場合、定説は社会構造やテクノロジーによって規定されるという側面があるため、かなり脆弱な点には留意する必要があります。

考えると悩むは異なる。そもそも考えるってどういうことか、どういう状態を考えると言っていいのか?ものを考えるというのは、瞬間です。たとえば一時間考えるなんてできません。集めた情報から示唆や洞察を生み出し、最終的に行動に関する計画を生み出すことであり、つまり「考える」というのは、集めた情報から、示唆や洞察をメッセージとして生み出す、ということです。したがって、一時間以上にわたって、他者に伝えたい「メッセージ」が出てこないとき、それはすでに「考えている」のではなく「悩んでいる」状況に陥っている可能性が高いと思っていいでしょう。長く考えるよりも、短く何度も考える方が突破口を見つけやすいのです。

アウトプットについては、What、Why、Howの三つの要素を備えているかを意識するとよいというのが、筆者のアドバイスです。ここでは、Whatは「やるべきこと」、Whyは「その理由」、Howは「具体的なやり方」を意味します。この中のどれが欠けたとしても、知的生産物は不完全なものとなってしまいます。

質問というものについて、どのように対処するか?「質問に答えてはいけない」とアドバイスすると驚かれるかも知れないが、筆者はよく若手にそうアドバイスしているのだとか。理由は単純で、顧客が質問をするとき、それが本当の意味で質問であることは滅多にないからです。相手が質問をしているとき、それは質問という名を借りた反対意見や懸念の表明であるケースがほとんどでだということを意識しておくといいでしょう。質問をもらった場合、それが本当に「わからない言葉の意味を確認する」といった純粋な質問でない限り、ほぼ間違いなくそれは質問という名を借りた反論なのだと考え、その反論をくみとれるような質問を逆にこちら側から返すように心がけるのがよいのです。

本書はKindle unlimitedで無料で読めます!

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

あなたの家族や友達にも教えてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

・現役世代を元気にしたいとの思いで新ブログを立ち上げ!
・本は2000冊以上読破、エッセンスを還元いたします
・金融機関で営業・調査部隊双方を経験。
・バックグラウンドは歴史とMBA

目次