簡潔・平明な説明が光る入門書!:「ざっくり分かるファイナンス~経営センスを磨くための財務」光文社新書、 石野 雄一

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コンパクトな新書1冊で、「ファイナンス」を理解するには「ざっくり分かるファイナンス~経営センスを磨くための財務」がおすすめです。簡潔・平明な説明が入門書としてうってつけだからです。1冊読むかどうかの違いが他の人との差を分けます。会社で働いているけど企業の経営の数字がわからない、最近株式投資を始めたけどしっかり稼いで株が上がる会社ってどんな会社だろう?、経済や企業のニュースが今井一つ頭に入って来ない……「ファイナンス」をめぐりいろいろな疑問や悩みがありますよね。「ざっくり分かるファイナンス~経営センスを磨くための財務」はその名の通り、基本的な概念をざっくりと示してくれます。順に見ていきましょう。

目次

「会計」と「ファイナンス」の違いとは?

ファイナンスとは、ひと言でいうと、「企業価値の最大化」をはかるための意思決定に役立つツール(道具)です。その意思決定には、投資・資金調達、配当の三つがあります。いずれも企業の将来を見据えた上で行われるものです。会計とファイナンスというと一緒くたに捉えがちですが、結構違います。

一番の違いは、 会計は「利益」を扱い、ファイナンスは「キャッシュ」を扱う ということになります。「利益」とは、「商品やサービスの売上から、その商品やサービスを作ったり売ったりする上でかかった費用を差し引いたもの」、つまり「売上から費用を引いたもの」です。売上や費用は、実際のキャッシュ(現金)の入り払いにかかわらず、商品を販売した時点、商品を仕入れた時点で、会計上「認識」されます。その結果、会計における決算書を構成する損益計算書に記載されるわけです。したがって、「会計上の利益」と「キャッシュの残高」が違う原因のひとつとなっています。

二番目の違いとして、会計とファイナンスとでは、対象となる「時間軸」が違います。会計が扱うのは、あくまでも企業の「過去」の業績です。決算書を構成する三つの要素であるバランスシートや損益計算書、キャッシュフロー計算書の数字は、現在ではなく終わった期末までの業績なのです。これに対して、ファイナンスは「未来」の数字、すなわち企業が将来生み出すキャッシュフローを扱います。 経営者自身が、常に「現在」と「未来」の二つの時間を考える必要に迫られている からです。経営者は、常に「現在の投資」と「将来のリターン」のバランスをとる必要があるということです。投資家にとっても、重要なのは終わった期の業績よりも、未来のキャッシュフローに対する期待値が重要です。株価は前を見るのですから。

「キャッシュフロー計算書」の読み方

キャッシュフロー計算書とは、結論からいえば、企業にどれだけの収入があって、どれだけの支出があったか、というキャッシュの動きを表すものです。バランスシートの一年間における現預金の増減の内訳を知りたければ、キャッシュフロー計算書を見れば一目瞭然です。 キャッシュフロー計算書は、2000年3月期から上場企業の有価証券報告書の中に含まれるようになりました。意外と最近からなんですよね。

「営業活動によるキャッシュフロー」は、企業の事業活動から得られるキャッシュフローのことです。ざっくり、言い換えると、モノやサービスの売上による収入、モノやサービスの仕入による支出、社員の給与などの支出などを総合したものです。利益はプラスでも「営業活動によるキャッシュフロー」はマイナスという事態もありえます。なぜこうしたこともありうるか言うと、利益とキャッシュは違うものだからです。つまり、売上があって利益が出ていたとしても、代金を回収していなければ、手元にキャッシュはないわけです。「営業活動によるキャッシュフロー」がマイナスを続けているとなると、その企業は「 経営上問題あり」ということになります。ただし、企業のスタートアップ時からあまり経ってない伸び盛りの会社には、「営業活動によるキャッシュフロー」がマイナスになることが往々にしてよくあることでもあります。

「投資活動によるキャッシュフロー」をを見れば、企業が何に投資をしているのかがわかります。固定資産(土地、建物、機械などの有形固定資産、特許権やソフトウェアなどの無形固定資産)や有価証券の売却による収入・購入による支出を総合したものだからです。「投資活動によるキャッシュフロー」に出てくる有形固定資産を取得するための支出額と減価償却費(取得した固定資産を使用可能期間にしたがって、少しずつ費用を計上する時に使う勘定科目のことです。もう少し説明すると、使えば使っただけ、どんどん価値が下がっていく機械設備の価値の減価分をその耐用年数に応じて、費用として計上したものです。とはいっても、実際にはキャッシュが会社の外へ出て行くわけではありませんよ)とを比較すると、 企業が投資活動に対して積極的かどうかが分かります。さらに、「財務活動によるキャッシュフロー」を見ることで、 その企業における営業活動ならびに投資活動におけるキャッシュの過不足の状況や資金の調達方法 を把握することができます。

「フリーキャッシュフロー」はなぜ重要か?

フリーキャッシュフローは、 企業が事業活動を行った後に、企業への資金提供者である投資家(株主と債権者)に自由に分配することができるキャッシュフロー のことをいいます。もうすこし噛み砕いてざっくりと言えば、企業が将来生み出すキャッシュフローから、事業継続にあたり”支払う必要がある”キャッシュフロー(例:仕入れや製造にかかる費用、社員のお給料、研究開発費、金利や税金など)を差し引いたあとのキャッシュフロー とも言えるでしょう。投資家の出資のもと、そのお金を使って実務に取り組んでいる経営者の使命の一つはフリーキャッシュフローの拡大です。なぜなら、理論的に言えば、株価の価値は将来の得られるであろう株式の配当を、予想される金利で現在の価値に割り引いたものだからです。配当の原資はフリーキャッシュフローなのですから、なぜ重要かはもう皆さんおわかりですよね?

このフリーキャッシュフローの概念は、企業経営・出資者である投資家双方に重要です。ファイナンスとは、 投資に関する意思決定(投資の決定) と、 その投資に必要な資金調達に関する意思決定(資金の調達) と、 そして運用して得たお金をどう配分するかという意思決定(配当政策)、これら三つの意思決定に関わるものと言えます。どのようなファイナンス活動を行っているかは、まさしくどのような経営活動を行っているかと同義と言っても過言ではないでしょう。

「リスク」とは「危険」ではなく「不確実な状態」のこと

リスクというのは、 「危険」という意味が一般的かもしれませんが、経済やファイナンスの文脈では、プラスやマイナスのニュアンスよりも、何が起こるかわからない将来の「不確実性」のようなものを表しています。リスクの本質とは「将来の不確実性」 にあり、そして「バラツキ」にあるという認識はとても重要です。経営や投資は、リスクを取ってリターンを得るわけで、リスク無しでリターンを得ることはできません。かつて辣腕を振るった時のゴーンCEO「リスクがない会社なんかあるわけない!あるとすれば、そんなのは死んだ会社だ」と一喝するのを筆者は聞いたそうです。経営者は何一つ確かなことなどない将来を見据えて、日々意思決定しているのです。

リスクとリターンのバランスを天秤にかけながら意思決定するのが経営者ですが、私たち実務レベルの人間は、リスクとどのように向き合えばいいのかを考えるべきというのが筆者の主張です。それは結局、「リスクを避けることではなく、実際にリスクに見合ったリターンを上げているのか」を考えることです。リスクに見合ったリターンの判断材料を過不足なく集め、経営者に届けて意思決定をしてもらうのが実務家の務めの一つと言えるでしょう。

応用編:「CAPM」、「ROIC」、「WACC」、「EVA」

いわゆるCAPM(Capital Asset Pricing Model、資本資産評価モデル、キャップエム)など、より発展的な内容についても分かりやく書いてあるのも、本書の特徴です。ROIC(投下資本利益率、Return on Invested Capital)は企業の収益性を図るのに重要な概念ですし、負債コストと株主資本コストから成るWACC(加重平均資本コスト、Weighted Average Cost of Capital)はお金の調達コストという点で見逃せない概念です。「WACCを下げる」ことは単なる数字の藩士だけではありません。 IR( Investor Relation =「投資家を対象にした」企業の広報活動)のミッションの一つもあります。WACCを下げるためには、投資家のリスク認識を下げることが重要ですでは、投資家のリスク認識を下げるためにはどうしたらいかというと、 適切な企業情報を適切なタイミングでディスクローズ(公開)する

ちなみにROICとWACCとの差を、 EVAスプレッド と呼びます。EVA( 経済的付加価値、Economic Value Added)とは投資した資本に対して、一定期間にどれくらいのリターンを生み出したかを示す指標です。利益とキャッシュフローだけでは捉えきれない企業のリターンを把握することが出来る数値とも言えるでしょう。EVAが単年度でどれだけ企業価値が増加したかを表す指標ということは、いわば会社の通信簿の点数でもあります。資本コストをEVAから差し引いたEVAスプレッドをプラスにする、拡大させることが経営者の使命というわけです。

以上で、「ざっくり分かるファイナンス~経営センスを磨くための財務」から、ファイナンスのエッセンスの一部をご紹介してきました。もちろん、具体的な説明や、噛み砕いた解説などは本書を直接お読みいただくのが一番ですが、雰囲気をいくぶん感じ取って頂けたのでないでしょうか。経済・商学をを志す高校・大学生、民間企業で働く若手社員、株式投資に興味がある人など、「ファイナンス」に少しでも関心のある人はすぐに手に取るべき1冊です。難しい本は、本書を読んでからのほうがより理解が深まるでしょう。

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この記事を書いた人

・現役世代を元気にしたいとの思いで新ブログを立ち上げ!
・本は2000冊以上読破、エッセンスを還元いたします
・金融機関で営業・調査部隊双方を経験。
・バックグラウンドは歴史とMBA

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