米国の経営者像として親しみやすいのは、世界のエンターテインメントを牽引するディズニーのロバート・アイガー氏でしょう。一介の社員から勤勉に働いて企業経営のトップに上り詰め、老帝国の再建と活性化に務めた”中興の祖”の物語は、日本人には馴染みやすく、勉強になります。
ウォルト・ディズニー・カンパニーの現会長で、前CEOであるロバート・アイガー氏は、1974年にABCテレビの雑用係としてそのキャリアをスタートさせました。担当していたのはスタジオで作成されるすべての番組の雑用で、ABCの中で最も賃金の低いポジションでした。34歳でABCスポーツのバイスプレジデントに就任、その後はABCエンターテイメントの社長としてエンターテイメント部門の再建を任せられるなど活躍。さらにその手腕を買われて、ディズニーによるABC買収後、15年近くディズニーのCEOを務め、2020年2月に退任し、現在は会長を務めています。
ピクサー、マーベル、ルーカスフィルム、21世紀フォックス……総額9兆円に及ぶ買収劇の内幕など、ディズニーの経営の裏側についても面白いのですが、本書の中核はタイトルのとおり、「ディズニーCEOが実践する10の原則」なのです。真の経営者とは、わかりやすいビジョンを示し、それを繰り返し伝えることができる人物と言えますが、アイガー氏はまさにそうしたリーダーシップの持ち主です。それでいて、畑違いの分野を任された時は、優秀な二人の部下に耳を傾けるなど、真摯で謙虚な姿勢を持つ人物です。習慣の点では、アイガー氏はABC時代に朝4時半にスタジオ入りする日々を続けていたおかげで、今も毎日早朝に起きており、朝のひとりの時間が生産性と創造性の向上に役立っていると述べているのも、注目できます。早起きと1人集中して考える時間をつくることはやはり重要です。
「ディズニーCEOが実践する10の原則」は以下のとおりですが、特別なことは何もありません。しかし、一見当たり前なことを貫き通すことが大切です。ロバート・アイガー氏のビジネスマン人生はまさに学びと実践そのものです。この10の原則を自身の仕事に当てはめてみて、指針にしてみましょう。仕事が良い方向に向かっていくはずです(アイガー氏が実証済みですからね!)。
- 前向きであること
- 勇気を持つこと
- 集中すること
- 決断すること
- 好奇心を持つこと
- 公平であること
- 思慮深いこと
- 自然体であること
- 常に最高を追求すること
- 誠実であること