悪辣な権力に向き合うための言葉の力とは?:ヴァーツラフ・ハヴェル『力なき者たちの力』(NHK100分 de 名著)

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「NHK100分 de 名著」はわかりやすく古典を始めとする多様な名著を紹介する番組です。書籍版もコンパクトに名著のエッセンスを凝縮しています最近では、ヴァーツラフ・ハヴェルの回が印象に残ったので、今日は『力なき者たちの力』をご紹介します。ハヴェルは戯曲家出身のチェコスロヴァキア大統領。言葉の使い手として、言葉に潜む危険性についても指摘しています。『あらゆるものの初めに言葉があります。 それは奇蹟で、われわれが人間であるのはそのおかげです。 しかしそれは、同時に、わな、試練、まやかし、そして試金石でもあります。』(「言葉についての言葉」飯島周訳、『反政治のすすめ』恒文社)。言論の空間がインターネットにも広がり、中国と米国の覇権争いが新冷戦の様相を呈してきた時代に、ハヴェルの言葉に耳を傾ける意義は大きくなりました。「資本蓄積の複雑な構造は、隠れて操作され、拡張されていく。どこにでも見られる消費、生産、広告、消費文化の独裁、そして情報の洪水。(略) これらのいずれも、人間性の回復にいたる展望のある道筋として見なすことはおそらく困難だろう」ともハヴェルは述べていますが、まさにそうした時代なのです。

目次

「表現の不自由」……対中国で必要な視点

『このようにしてポスト全体主義体制は、人間が一歩踏み出すたびに接触してくる。もちろん、イデオロギーという手袋をはめて。それゆえ、この体制内の生は、偽りや噓ですべて塗り固められている。官僚政府は人民政府と呼ばれる。労働者階級という名前の下で、労働者階級が隷属化される。(略) 表現の不自由は、自由の最高の形態とされる。選挙の茶番は、民主主義の最高の形態とされる。(略) 権力はみずからの噓に囚われており、そのため、すべてを偽造しなければならない。過去を偽造する。現在を偽造し、未来を偽造する。統計資料を偽造する。全能の力などないと偽り、何でもできる警察組織などないと偽る。人権を尊重していると偽る。誰も迫害していないと偽る。何も恐れていないと偽る。何も偽っていないと偽る。このような 韜晦 のすべてを信じる必要はない。だが、まるで信じているかのように振る舞わなければならない、いや、せめて黙って許容したり、そうやって操っている人たちとうまく付き合わなければならない。だが、それゆえ 噓の中で生きる 羽目になる。

中国と付き合ううえで意識しておくべき点と言えるでしょう。香港やウイグルの情勢はSるにしても、現実問題として経済的に日本は米国と中国の両方と付き合っていく必要があるのですから。多かれ少なかれ嘘の中で人は生きていますが、中国との距離感の保ち方、いなし方、向き合い方は政府にとっても、民間企業にとっても重要な課題となりそうです。対中国に関する私たちの言葉もそうですし、中国の様々な発信源の言葉の読み解きもそうです。

「言語の儀式化」……SNSによる分断の時代に必要な視点

『なかでも── 言語の儀式化 というものが起きている。現実を示したり、現実を理解するための手段から、言葉それ自体が目的となったかのように、言語が変容したかのようである。(略)  例えば、何について話しているかよりも、どういう言葉を用いているかのほうが、今日、重要性を増していることがあるのに気づいてみるがいい。言葉──そのような言葉──は、カテゴリーのための記号であることをやめ、カテゴリーそのものになりつつある。ある現実を別の現実へと変えてしまう魔術的な力を獲得しつつあり、そこでは、思想を通して議論がなされるのではなく、概念を通して議論がなされる。』 (「チェコスロヴァキア作家同盟会議での演説」一九六五年、著者

ハッとした人も多いんじゃないでしょうか。ネット上にあふれる言論を見るに、使う言葉によってどの陣営に属していて、どういう考え方の様式を持っているか即座にわかってしまう人ってよく見かけますよね?脊髄反射で出てくる言葉はまず飲み込んで、「思考を巡らす」時間をまず作りましょう。現実を示したり、現実を理解するための手段としての言語を回復することが現代人にとって重要な課題と言えそうです。

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この記事を書いた人

・現役世代を元気にしたいとの思いで新ブログを立ち上げ!
・本は2000冊以上読破、エッセンスを還元いたします
・金融機関で営業・調査部隊双方を経験。
・バックグラウンドは歴史とMBA

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