『「超」整理日誌〈6〉―正確に間違う人、漠然と正しい人』野口悠紀雄、ダイヤモンド社

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第6巻は2000年度分を収録。タイトルは、ケインズの「私は、正確に誤るよりは、漠然と正しくありたい」のもじりです。この巻から「その後の展開」という加筆部分が加わって、時事ネタがその後どうなったかがわかり、読者からの投書などが反映されていて面白いです。しかも、人物や用語には追記がたくさん付いててお得。もちろん「はやりことばの盛衰」なども健在です。

「ITが変える労働市場」では、「ITが経済活動に与える影響の本質は、社会の様々な場所に存在しているローカルな情報を、非常に低いコストで他の主体に伝達できることだ」と述べています。「ロングテール」というコトバがなかった時代にこの洞察とはさすがです。

また、ハイエク曰く、「多数の経済主体によって行われる経済活動を全体として調節していくためには、価格、またはそれに類似した手段を用いざるをえない。それ以外の手段によっては、膨大な情報を処理することは出来ない。」のだそうです。これは、社会主義の計画経済がうまくいかない理由の一つで、経済学者の共通認識。この考えも、様々な点で応用が効きそうです。

「暑さへの最高の対処法は被害者意識の共有」「ゆとり教育は社会階級の固定化をすすめる」という意見も面白かったです。「秋のはじまり」では、季節に対する感覚は、その時点の環境だけではなく、今度どうなるかという人々の予測が影響すると書いています。つまり、絶対値だけではなく、微分値も重要な役割を果たしている。人間は、つねに変化の一部として現在を位置づけているわけで、評価というものは相対的なものと言っています。ここで、野口教授は、季節のみならず、音楽を例としてあげているが、人間の物事・出来事に対しての考え方は、なんであれ相対的なものではないか?そうした点を念頭において、文章を読んだり、人が言う内容を解釈するといいかもしれないですね。

「経済学者とは何者?」では、モジリアニ=ミラーの命題を枕に、恒例のジョークが盛りだくさんになっています。いつもどおり、とりわけ気に入ったものを紹介してこの記事を終えます。

ノーベル経済学賞は、社会科学で唯一のノーベル賞だ。社会学、政治学、歴史学、心理学、文化人類学等々の分野ではノーベル賞はない。ノーベル経済学賞の受賞者であるジョージ・スティグラー教授ははこれについて答えた。「全然心配する必要はない。なぜって……ノーベル文学賞がある。」

Q:「経済学者とは?」
A1:「すべての財とサービスの価格を正確に知っているが、それらの価値をまったく知らない人々である。」
A2:「昨日予測したことが今日起こらなかったことを、明日になってわかる人々たちである」
A3:「電話番号を聞かれたら推定値を答える人々(※計量経済学者orケインズ)」

経済学の第一基本法則:任意の一人の経済学者に対して、その主張に反対する別の経済学者が存在する。
経済学の第二基本法則:ふたりとも間違っている。

経済学は、意見が正反対の二人が、ともにノーベル賞受賞者になれる唯一の学問である。(例:ハイエクとミュルダール,1974)

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この記事を書いた人

・現役世代を元気にしたいとの思いで新ブログを立ち上げ!
・本は2000冊以上読破、エッセンスを還元いたします
・金融機関で営業・調査部隊双方を経験。
・バックグラウンドは歴史とMBA

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