日本の本質的な病理からあなたも抜け出そう!「知の衰退からいかに脱出するか」大前研一、光文社

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440ページ書き下ろしの大部。読み応えもさることながら、広い視野と細やかな事例にもとづいた筆者の論考は、一読の価値ありです。「知の衰退」すなわち、日本人が考える力を失いつつあることが、この国の病理であると著者は述べています。2009年に書かれた本ですが、SNSのさらなる発達で落ち着いて物事を考えることがなおさら難しくなっているので、考えることの重要性はさらに増しています!

なるほど、ここ十数年の政局やマスメディアの報道、テレビ番組を見ていて、何かおかしいと感じていたのは私だけではないはず。ちょっと考えれば変だぞとわかるようなことでも、見過ごされてきて、いろいろなことが発覚し、ニュースをにぎわす。そういったことがこれまで一体何度あったでしょうか。

日本の”集団知”の低下が様々な現象に現れており、様々な事象の分析を通して筆者は語りかけてます。「もっと考えろ」と。「昨今のベストセラー」「大新聞の報道」「”失われた10年”という言霊」「政治報道ワイドショー化」「クイズとお笑いばかりのテレビ番組」「食料偽装」「官製不況の原因」「日本人の経済音痴」「選挙」「短絡なネット悪影響論」「何でも規制の方向に走る官僚」「無欲な若者と教育制度」「現状にそぐわない教養と大学教育」「低IQ社会で得をしているのは一体誰か?」…etc。枚挙にいとまがありません。

とにかくわんさかあるわけですが、考えない人間が増えていることがその背景にあると著者は指摘。このようなバカっぽい現象を上から見て笑うのではなく、個別の事象を考察し、解決策を提言しているところが非常に魅力的です。たとえば税制について大胆な提言をしています。金融資産は異常に高齢者に偏っていて、日本人は死ぬとき一人平均3500万円をもって死んでいく。日本人は死ぬ瞬間が一番金持ちだ。したがって、相続税を失くしてしまい、日本人の資産運用に関する意識を高める必要があります。もっと言えば、所得税や相続税等は撤廃し、税制を資産税と付加価値税の2つに絞るとというドラスティックな税制改革までも提唱しています。

この本で一番言いたいことは結局は「考えろ」ということですが、このように現在の日本に関わるたくさんの事例について問題解決の提言を行っています。膨大なデータと事例を分析していて、それを知るだけでも読む価値があります。もちろん、そこで終わってはいけません。「自分で考え、行動する」ことが最も大切です。一人ひとりが変わることが、日本人全体の集合知を変えるのです。問題はこの本を読んだ後、どう考え、行動するか、ここまで読んでくださった方はそうした気構えがすでにできているはずですよね?。

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この記事を書いた人

・現役世代を元気にしたいとの思いで新ブログを立ち上げ!
・本は2000冊以上読破、エッセンスを還元いたします
・金融機関で営業・調査部隊双方を経験。
・バックグラウンドは歴史とMBA

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