恒例ジョーク集、東京独立論とそのポテンシャルとは?:『IT時代の社会のスピード―「超」整理日誌(5)』野口悠紀雄、ダイヤモンド社

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1999年度分のエッセイ集。とりわけ、「Linuxが問う未来」「正確すぎて、ちょっとおかしい問答」「東京は5分で独立できる」の3つが特に面白い。

「Linuxが問う未来」では、何気に書いてはいるが、1今でも議論される話題の数々が潜んでいます。つまり、知識や情報の生産と利用は、相反する要請に直面しているというものです。そのジレンマとは、生産を促進するためには有料にする必要する必要があるが、その一方で利用を促進するためには無料にする必要があります。。

「正確すぎて、ちょっとおかしい問答」は、恒例のジョーク集。たくさん収録されていますが、ここでは私が読んで面白かったものを取り上げます。
まずは、「2より大なすべての奇数は素数であることを証明せよ。」にいろんな学者が答えるシリーズ。
数学者「3は素数である。5は素数である。7は素数である。よって、数学的帰納法により、2より大なすべての奇数は素数である。」
プログラマ「3は素数である。5は素数である。7は素数である。7は素数である。7は素数である……」
統計学者「ランダムに数を選んで調べてみましょう。7は素数である。23は素数である。17は素数である……」
物理学者「3は素数である。5は素数である。7は素数である。9は実験上のミス。11は素数である……」
生物学者「3は素数である。5は素数である。7は素数である。9については実験結果が出るまで、まだしばらくかかる。」
心理学者「3は素数である。5は素数である。7は素数である。9は……素数なのですが、その事実を抑圧しようとしてますね。」
会計学者「3は素数である。5は素数である。7は素数である。9は税額分の10%を控除し、さらにその他の負担分の5%を引けば、素数になる。」
法律学者「3は素数である。5は素数である。7は素数である。9については素数でないことを証明するに十分な証拠は集まっていない。」
新聞記者「3は素数である。5は素数である。7は素数である。9が素数か否かに関する専門家の議論の成り行きが注目される。」
セールスマン「3は素数である。5は素数である。7は素数である。9は……お客さん、出来る限りのことは致しますよ。」
エンジニア「3は素数である。5は素数である。7は素数である。9は素数である。11は素数である……」
広告マン「3は素数である。5は素数である。7は素数である。11は素数である……」

個人的には、会計学者、物理学者、新聞記者、広告マンのが面白かった。

「弁護士と吸血鬼の違いは何か?」
吸血鬼が血を吸うのは夜だけである。

「犯罪人が法を犯すことを、犯罪人が逮捕される前において助ける人を何というか?」
「共犯者」
「犯罪人が法を犯すことを、犯罪人が逮捕された後において助ける人を何というか?」
「弁護士」

確かに!

法廷では正確に質疑応答がなされるけれども、正確すぎて妙におかしくなることもしばしば。以下は、実話がそのままジョークになっているそうだ。

「あなたの最初の結婚が終了した原因は何ですか?」
「死によって終了しました。」
「誰の死によって終了しましたか?」

自明のことでも問い直す愚直さが滑稽。

「あなたの答えはすべてオーラル(口頭)でなければいけませんよ、いいんですね。では、あなたが通っている学校の名は?」
「オーラル」
「あなたは何歳?」
「オーラル」
子供のやり取りのような状態に陥ってしまうおかしさ。

「あなたは、耳を掴んで犬を持ち上げたのですか?」
「いいえ」
「では、あなたはその犬の耳に何をしたのですか?」
「それらを掴んで空中に持ち上げました。」
「その時、犬はどこにいたのですか?」
「耳にくっついておりました」
これまたシュールなやりとりだ。

「東京は5分で独立できる」もユニークです。大阪都構想が話題になっているが、日本全体ではなく、東京都単体で見ると今後も成長の余地が大きいそうです。このGDP世界一の都市・東京という記事にあるとおり、東京のGDPは2008年の試算で、さらには2025年の予測でも世界で一位となっています。

よく東京一極集中と揶揄されます。だが、それを逆手にとって”東京都”が”東京”として成長していく道もあるのではないだろうかという逆説的な発想です。東京の経済活動から得られる税収の大部分は国に集められ、日本全国の他の地域に支出されてます。つまり、収支を考えると、東京は大幅に支払超過です。とすると、独立してしまえば、東京はもっと豊かになるのではないでしょうか…?

実は東京都の予算額は何気に国家規模。東京都の予算額は当時12兆円。本書執筆時のギリシャの国家予算(11兆円)を上回り、韓国の国家予算(18兆円)の、3分の2にあたります。これを考えると、独立国として十分やっていける規模です。人口も23区で800万人、都全体で1200万人。これも結構な人数です。シンガポールの例を引くまでもなく、案外、都市国家として現状よりもっと発展できるのではなかろうか。

とはいえ、独立するのは容易ではあります。ここで、野口教授は愉快な「5分間独立戦争」を提案してます。内容を纏めるとこんな感じです。

某日深夜3時、東京共和国は独立を宣言し、各国にその旨をメール
→アメリカに宣戦布告
→突撃隊が米軍横田基地にスプレーで「ヤンキー帰れ」「NO!と言える東京」と落書きする
→密約のとおり、米軍憲兵隊が突撃隊を逮捕
→東京共和国、アメリカ合衆国に無条件降伏
→アメリカ合衆国は東京共和国の占領を宣言、東京からの日本国政府機関、自衛隊の撤退などを求める。警視庁は占領地域の治安維持組織として取り込む
→鉄条網損傷と落書きに対する損害賠償を1000ドル程度支払い、東京共和国はアメリカ合衆国と講和を結ぶ
→独立!!

最初読んだ時などは笑ってしまった。ユニーク。でも、これ皇居はどうするんだろう。あ、待てよ、天皇陛下には京都へ遷都していただき、東京のない日本国の首都は京都にすればいいのか。解決してしまった。

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この記事を書いた人

・現役世代を元気にしたいとの思いで新ブログを立ち上げ!
・本は2000冊以上読破、エッセンスを還元いたします
・金融機関で営業・調査部隊双方を経験。
・バックグラウンドは歴史とMBA

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