2003年4/12号~2004年4/17号連載分を収録した「超整理日誌(7)地動説を疑う」は、イラク戦争・フセイン体制崩壊、郵政公社と産業革新機構の発足、りそなグループへの公的資本注入、陸上自衛隊のイラク派遣、新生銀行の上場、BSE(狂牛病)、SARS(鳥インフルエンザ)の流行など激動の時代でした。本書も今日につながる意見が満載です。
特に、テレビは「1分間メディア」であるという歯切れのよい断言は、今なお考えないといけない点です。テレビのコメンテーターは、説明に1分以上要する内容は言えないため、テレビが肥大化した世界では、(鵜呑みにした場合)多くの人がステレオタイプの意見しか持てなくなってしまいます。賛成・反対の対決構図さえ決められてしまうのです。この点は、ネットでも同じです。冷静に物事を考える必要性はかつてなく高まっています。
サブタイトルの「地動説を疑う」とは、常識だと思い込んで根拠もなく信じていることを自分の頭で考え直そうということです。言い換えると、メディアや他人が主張している内容を、「本当かな?」と常に自分の視点で疑問を持つことが重要です。この人はどういう立場やモノの見方から、このことを言っているのか?を考える習慣をつけると、思考力が身につきます。
自分の考え方も1つに固まっていないかを常に意識して、他人の意見を聞く耳を持つことも重要です。敵・味方、こちら・向こう、好き・嫌いの二分法で世界を知らず知らず見てしまうものですが、見慣れた視点や固定観念からあえて離れてみることも意識して行う必要があります。2020年の大統領選でもマスメディアの報道には角度がついていることはお分かりいただけたでしょう。
特に、現代は党派性による分断が深刻になっているのは日米ともに同じです。お決まりの反応というやつが特にSNSにおいて溢れかえっています。この情報は妥当なものか、決まりきったコメントを脊髄反射していないか、絶えず考えないと思考の鋳型に飲み込まれていきます。テレビ、新聞に対しても同様です。意図するしないに関わらず不正確、不十分なニュースと論評は至るところにあります。部分と全体の峻別に加え、判断と判断の留保の使い分けにより思考停止にならない事が重要です。以下の記事・本と↓併せて読むと、思考力の重要性を今一度感じられるはずです。
漫然と生きる人生から脱出するための考え方と生き方のポイント:
「調べる技術 書く技術―誰でも本物の教養が身につく知的アウトプットの極意」 佐藤優、SB新書