1週間に1回だけ会う人と、毎日必ず会う人なら、どちらが記憶に残るでしょうか?『東大首席が教える超速「7回読み」勉強法』はある意味で、アタリマエのことを投げかけているように見えて、本質を突いています。つまり、あなたはどれだけ繰り返して、記憶に定着させたのか?ということです。著者の経歴は、東大を主席で卒業して財務省に勤務し、その後ニューヨーク州弁護士資格を取得したということで、いかにもエリートに見えるかもしれません。しかし、そんな人でさえ、地道な努力を繰り返しているのです。努力とは「反復と継続」であり、理解と認知の最短距離こそが勉強法です。「7回読み」は努力と勉強のやり方として有力な手段です。
「7回読み勉強法」はただ、平板に7回読むのではなく、メリハリを付けて読んでいきます。最初の1~3回目では、見出しなどを拾いながら読み流していき、全体像を掴んでいく「サーチライト読み」をします。いわば「輪郭線」づくりの作業といえるでしょう。
1回目は、全体像を大まかに掴み取ることが目的です。「見出し」をたまのノート上に写し取る感覚で読みます。文章にも目を通しますが、章のタイトルや大見出し、小見出し、見出しごとの関係を意識しよう。
2回目は、「見出し」が頭に入った段階での、全体の流し読みになります。より全体像やアウトラインが頭に入ってきて、全体像を掴むことができるようになります。
3回目は、2回前と同様さらにサラサラと読む。まだ内容を理解しようとするのではなく、あくまで流し読みすることがポイント。アウトラインをより詳細、明確なものにしていきます。
次の4、5回目では、重要なキーワードを意識しながら、普通のスピードで読み進めて「要旨」を掴む「平読み」をしていきます。
4回目は、頻出キーワードや用語が解説されている箇所に注目します。やや力点をつけていくわけですが、この段階でも内容を理解したり、覚えようとしたりする必要はありません。
5回目は、キーワードとキーワードとの間にある説明文を意識して読みます。このとき、4回目で拾ったキーワードが「どのように説明されているか」、キーワード同士が「どのように関連しているか」に注目していきます。ここで初めて理解を意識するのです。
最終ステップの6、7回目では、答え合わせをする感覚で内容を要約していく「要約読み」をします。
6回目は、要旨を説明する具体例など、細部に目を向けていきます。そうすることで、キーワードの意味やキーワード同士の関係をより正しく理解できるようになります。7回目は「ここにはこんなことが書いてあったはず」と頭の中で先に要約をして、答え合わせをするような感覚で読んでいき、記憶に定着させます。認知から、理解、記憶と、ホップ・ステップ・ジャンプです。
以上をまとめると、こうなります
30分~1時間の流し読み×7セット
・全体像(1回目)→見出し把握(2回目)→アウトライン把握(3回目):アウトライン明確化
・内容(4回目)→キーワード意識(5回目)キーワード間の要旨理解
・細部・具体例(6回目)→要約(7回目):不明点ピックアップ、定着
7回を超えて読み続ける場合、6回目以降の「要約して答え合わせしていく」プロセスを、どんどん強めていくイメージするよいでしょう。「知っていることが8割」のテキストを繰り返し読むことは記憶の定着に重要ですし、そのうえで問題を解くなどのアウトプットにも適用すると効果てきめんです。新しい分野ならば全てを読み通して、全体から細部の把握に移り、効率的に「知っていること」の割合をできるだけ早く増やすイメージでしょうか。
回数を重ねるごとに少しずつ内容に親しんでいけるので、自然と深い理解に変化していくという点は当たり前のようで見逃しがちな点です。ドラえもんの暗記パンが存在しない以上、読むという「認知」から、「理解」へと至るプロセスを繰り返すほかないのです。文章の理解と記憶の定着を深めるものは、才能ではなく回数なのだから。