変わるためには象・象使い・道筋が3つの鍵!:『スイッチ! 「変われない」を変える方法』チップ&ダン・ハース、早川書房

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『スイッチ! 「変われない」を変える方法』は行動経済学の知見をふんだんに盛り込んだベストセラーです。著者のチップ&ダン・ハース兄弟というと『アイデアのちから』も有名ですね。「変われない」を変える方法とは、魅力的なタイトルですが、そのためのスイッチとはどのようなものなのでしょうか。その答えは、象・象使い・道筋の3つの特性を知り、うまく動かすことです。脳では理性と感情という、ふたつのシステムが働いています。本書では私たちの感情を、怠け者で、気まぐれで、短期的な報酬に目を奪われてしまう「象」に、理性を、長期的に考え、計画を練り、先を見すえることができる「象使い」に、そして置かれた環境を「道筋」にそれぞれ例えています。この3つをどのように動かしたらいいか、結論を先取りしてしまうと、それぞれ以下のとおりです。

  • 理性(象使い)に訴えかけるには、成功例を探して真似ること、全体像で考えるのではなく具体的な行動を定めること、変化の目的や価値を理解させること
  • 感情(象)に訴えかけるには、変わりたいという感情を生み出すこと、変化を細分化して少しずつ積み重ねていくこと
  • 環境(道筋)を整えるには、行動が変化するように環境を変えること、行動を習慣化させること

何かを変えたいなら、象と象使いの両方に訴えかけるべき必要があります。象使いの担当は計画や方針。象の担当はエネルギーと実行となります。片方だけで変えるには大変ですが、象と象使いが協力させ、そのための環境も整えれば、うまく変化を引き起こせる場合もあります。行動を変えるための基本的な指針としては、①象使いに方向を教える、②象にやる気を与える、③道筋を定める、の3点がポイントです。

自他の行動を変えるための主な補足的アドバイスは以下のとおりです。「全体像のみで考えず、具体的な行動を考えよう」、「象がおびえないくらいまで、変化を細分化しよう」、「目的地はどこか、そこへ向かうメリットは何かを理解すれば、変化はラクになる」、「知識だけでは変化を引き起こすには不十分。感情を芽生えさせよう」、「行動が習慣になれば、象使いの負担はなくなる。習慣を促す方法を探そう」。いずれも一見すると当たり前ですが、故・野村克也氏が「当たり前のことを当たり前にできるのがプロフェッショナル」と言うように、当たり前こそ重要です。具体的な行動と起こすべき変化の細分化、目的の確認とゴール設定、知識だけでなく自他の感情のコントロール、良い行動の習慣化など、行動変容のコツが盛り沢山です。

最後に、具体的な行動変容について興味深い研究結果が本書で述べられていたので、紹介します。「自分がしなければと思っていることに関して、何かをする時間と場所をイメージすれば、実際に実行する確率が高まる」というものです。大学生を対象にした研究で、クリスマス・イブの過ごし方に関するレポートを課された学生のうち、提出したのは33%であったが、あらかじめレポートを書く正確な時間と場所を宣言させた別のグループの学生はなんと75%の学生がレポートを書いたのだそうです。つまり、心理的な計画と宣言によるコミットメントには、「心を惑わす誘惑、悪い習慣、対立する目標から目的を守りぬく」効果があります。

以上で、要旨と実践例の一つをカンタンにご紹介してきました。人生は「今日の行動が明日の自分を作る」の繰り返しです。「変われない」を「変えたい」と思っている人は、必見と言えるでしょう。人生好転のきっかけになる1冊です。

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この記事を書いた人

・現役世代を元気にしたいとの思いで新ブログを立ち上げ!
・本は2000冊以上読破、エッセンスを還元いたします
・金融機関で営業・調査部隊双方を経験。
・バックグラウンドは歴史とMBA

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