『「礼儀作法には金がかからない。しかも礼をつくすだけで何でも手に入る」 これはモンタギュー夫人の有名な言葉だ。親切心は確かに何よりも安上がりで、手間もかからなければ自分を犠牲にする必要もない。』とサミュエル・スマイルズの「自助論」にもあります。今から、タダで、誰にでも出来ることは、礼儀正しくすることです。『Think CIVILITY(シンク シビリティ) 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』は、礼儀正しさこそがその人の評価を向上させ、職場全体の雰囲気をも改善する鍵であると、力強く説きます。
礼節のある人の方がリーダーにふさわしい人だと評価されやすいですし、物事も何かとうまく進みます。礼儀正しく接する人には、多くの人が声をかけたいと思うようになるのは当然のことですよね?そうした人には、情報やチャンスが巡ってきやすいのです。もちろん、上の立場の人が礼節を重んじていると、従業員は安心感を得ることができます。人は尊重されると、自分に価値があると感じ、力を発揮できるからです。笑顔でいること、相手の存在を認め、尊重すること、そして相手の話を聞くことが礼儀正しさの基本ですが、簡単なようでいて、誰もがやっているとは限らないことです。
礼儀正しさの重要性はもちろんですが、それ以前の話として、無礼な態度でいることは非常に大きな損です。まず、認識しておくべき点は、無礼な人には「コスト」がかかるということ。そもそも、無礼な態度は人の健康に影響を及ぼすことが、近年の研究で明らかになってきています。たとえば、無礼な態度は人の免疫システムを害し、循環器系の病気やガン、糖尿病、潰瘍などにつながる恐れがあるほどです。そのうえ、理不尽な扱いを受けた人は、集中力や注意力、思考力が著しく低下するため、それがミスを起こす原因にすらなる。自分にも、周りにも害ばかりなのです。
礼節ある人が守っている3つの基本動作とは?
では、より礼儀正しくなるためには、具体的にどうしたらよいのでしょうか。礼儀正しい人になるための基本動作を3つ紹介しましょう
1つめは、基本中の基本、「笑顔」です。子供は平均して1日400回笑うとされますが、大人になると1日20回以上笑う人は、全体の30%ほどだといわれます。科学的にも、笑顔は周囲の人たちの能力を高める力があることがわかっています。やはり笑顔は大事です。
2つめの基本動作は、「相手の存在を認め、尊重すること」です。特に、自分よりも目下の人に関心を向け続けることが重要となります。
3つめの基本動作は、「相手の話を聞くこと」です。話を聞いているつもりでも、つい相手の話を遮る人や、不要な助言をしてしまう人は多いものです。すべての注意を相手に向け、話をよく聞くことを心がけましょう。
この3つの基本動作は、良好な人間関係を保ち、深めるうえで欠かせない能力です。職場だけでなく、家庭やネット空間でも意識するとより良いでしょう。
一段上の礼節を身につけるための5つの心得とは?
3つの基本動作の地盤の上に、ワンランク上の礼節を身につけたい人は、次の5つの心得を実践するとよいでしょう。
1つめは「与える人になる」ことです。周囲の人たちを助け、多くを与えること、他人に貢献することは、礼節を重んじることにつながります。しかも、気前のいい人は、周囲との関係が深まり、長期的には成功しやすいのです。つまり、他者に伝えられる専門知識などの情報的リソースや、その人の意識・立場といった社会的なリソースを、積極的に他人と共有するとよいというわけです。
2つめの心得は、「手柄を自分だけのものにしない」ことです。他人を立てる謙虚さは、もっと貢献したいという肯定的な雰囲気を周囲に伝播させる効果があります。
3つめの心得、「褒め上手な人になる」ことです。人は褒められたらそのことをよく覚えているもので、感謝を言葉にして伝えると、次回の自分の頼みだけでなく、第三者の希望も聞いてもらえる可能性が上がるといいます。
4つめの心得は、「フィードバック上手」になること。肯定的なフィードバックを多く受ける社員は、短所ばかり指摘される場合に比べて、仕事に打ち込みやすくなります。否定的なフィードバックを伝えないといけない時には、肯定的なフィードバックと組み合わせて、好意的な態度や表情を意識すると、相手に受け入れられやすくます。
5つ目のの心得は、「仕事に意味を感じる人になる」ことです。自分の仕事に意味を感じることができれば、仕事に熱心に取り組み、個人として成長しやすいうえに、幸福も感じやすくなる効果があります。社員への顧客からの感謝の声を紹介すると、社員の士気が高まるのは、その一例です。
会社を礼節ある場にして雰囲気をよくする4ステップ
アメリカ心理学会の試算によると、職場のストレスによってアメリカ経済にかかるコストは、1年に5000億ドルにものぼるといいます。ストレスを感じながら働いている労働者は、そうでない労働者に比べ、医療費が46%も高いのです。ストレスの大きな原因は人間関係にあるため、無礼な人がいれば医療費は高くなり、病欠が増える可能性が高くなります。さらにそのせいで離職者が増えると、採用コストもかかってしまいます。会社がパフォーマンスを上げるためにも、職場に一定の礼儀正しさは必要なのです。
会社をより礼節のある場にするためには、採用、コーチング、評価、改善策の実践という4つのステップを意識するとよいでしょう。まず、そもそも論として、礼節を欠く人は採用の段階で排除してしまうのが一番です。面接では、無礼な態度がないか、よく観察します。面接の最中だけでなく、出迎えの社員や受付係への態度をヒアリングすると、就職志望者の有用な情報が得られやすいです。さらに確実性を高めるためには、一緒に食事をする、イベントに参加させるなどして、関わる人間を増やすのが効果的です。お互いの価値観のすり合わせもしやすくなるし、合わない人を採用しなくて済むので、双方にとって時間の節約になるはずです。
礼節を欠く人に対する会社の対応策
とはいえ、実際のところ無礼な人は会社にいますよね?会社の観点からは、礼節を欠く人への対応には2つの選択肢があります。ともに働き続けるか辞めてもらうかです。
無礼な社員が、他人からのフィードバックに対応する気があれば、改善策の実践によって、その社員を生まれ変わらせることは可能です。ポイントは、証拠を提示する、証拠の妥当性を確認する、悪い行動を続けた場合どうなるかを伝える、改善を実行させる、である。よくない行動をとってしまう原因が何なのかを、本人が知る必要があるからです。そのうえでの第一歩は、無礼な行いをした人がその原因と結果を自覚し、無礼な態度の影響を受けた人に対して謝罪をすることです。さらに、周囲の人に状況の改善に向けて協力を仰ぐ。その後、その人の行動に改善が見られるかを確認することで、本人は少しずつ進歩していくのです。
礼節を欠く人に対する個人の対応策
人生の中で、無礼な人に出会い、その被害を受けることはあります。では、無礼な扱いを受けたときの具体的な対処法はどのようなものでしょうか?。無礼な行いを受けたときに、我を忘れてやり返してはいけません(「半沢直樹」のドラマは忘れましょう)。怒りは伝染しやすく、ときに危険なものです。「加害者となった人に言い返しても身体的な危険はないか」「その無礼な振る舞いは意図的なものか」「その人が無礼な行動をとったのは初めてか」。まずは、これらの問いについて冷静に考えようと筆者のアイデアです。より詳しく見ていきましょう。
もしこれら3つの問いの答えがすべてイエスならば、相手と面と向かって話し合ってみる価値があります。その際は、双方が気持ちよく話せる時と場所を選び、どうすれば最もお互いにとって利益になるかを最優先に考えるとましょう。3つの問いへの答えが1つでもノーであったなら、直接の話し合いは避けたほうがよいです。相手と接触する際には、会話を手短に、相手にとって有用なことだけを話すべきです。好意的で毅然とした態度で接するようにしよう。
以上で、ポイントを解説しつつまとめてきました。「礼儀正しさ」という、一見すると当たり前のようでいて、意外と意識されていない点にフォーカスした本はあまり見ません。本書を読むと、周りの人とは一味違う礼節の備わった紳士・淑女になれますよ!今から、タダで、誰にでも出来ることに目を向けてみませんか?