古代の元祖エッセイストの人生訓に学ぶ:「モラリア 1」プルタルコス、京都大学学術出版会

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約1900年前の元祖エッセイスト、プルタルコス(46年から48年頃 – 127年頃) は、モンテーニュの「エセー」にも大きな影響を与えた人でもあり、プラトンや、クセノフォンと同様、多数の作品が時を越えて現存しています。その事実一つだけでも、著作の価値は証明されていると言えるでしょう。

世界史の教科書では、ギリシア、ローマの英雄を叙述した「対比列伝」が有名(もちろんこちらも面白い)ですが、実はエッセイもなかなかに面白いし、たくさん残しています。

具体例の箇所を除けば古典という感覚はあまりないので、現代人に馴染みやすいと思う1冊です。深遠で難解な話ではなく、なにぶんエッセイだからという気軽さがあります(それゆえどうでもいいようなことも語ってるときもありますけどね)。

プラトンやアリストテレスといった、古代の「知」をふまえて様々なテーマを語るプルタルコスは、 さながらおしゃべり好きのコラムニストです。自分の意見を語る際には、豊かな博引傍証によって裏付けています。この部分だけでも、古代の世界に関心がある人には面白いですし、人間の感情や悩みの普遍性にははっとさせられます。。

「モラリア」1巻に収められているのは、
・「子供の教育について」
・「どのように若者は詩を学ぶべきか」
・「講義を聴くことについて」
・「似て非なる友について」
・「いかにして自らの得の進歩に気づきうるか」の5編。
教育論、勉強法、人付き合い…いずれも現代に通じるテーマです。

さて、「子供の教育について」はその名の通りの内容。褒めることと叱責すること、努力と休養を交互に混ぜることなど、至極妥当だが、それでいて本質的な事柄が、 率直な言葉で語られています。

「講義を聴くことについて」は講義の受け方を再認識する手がかりになります。 聴く者の態度やマナー、知的議論の作法についてプルタルコスは語っており、そのポイントは一言でまとめると講師と聴講者の協力関係がシナジーを生み出すのだという点です。なるほどその通りです、としかいいようがない内容ではありますが、当たり前をしっかり成し遂げることは、有用な成果につながります。「自制心があり慎みをもって聴く習慣を身につけている人は、有益な議論は受け入れて自分のものとし、無益な議論や偽りは容易に見分けて見破るので、論争好きではなく向こう見ずでも喧嘩好きでもなく、真理を愛するものであることが明らかになる。」のですから。

とはいえ、ただ聴いて受け入れればいいわけではない。「話し手に対して好意を抱いている場合には、知らないうちに多くの偽りや悪い教説を受け入れてしまいがちである。」と、 聴く人間に内在するバイアスも指摘してるのはさすがです。「言葉だけではなく行為についても、有益性がこれ見よがしの要素より勝っているか、真実を求めることが誇示する動機より勝っているかを、調べなくてはならない。」との考え方は、耳寄りな情報を持ちかける広告や宣伝、政治家のパフォーマンス的な言動等に、惑わされずに冷静に判断するために役に立ちますね。

また、会話については「時をわきまえた沈黙は賢明であり、どんな言葉にも勝る。」などのアドバイスを書いています。

「いかにして自らの徳の進歩に気づきうるか」は、トラヤヌス帝のもとで二度執政官を勤めた友人、ソシウス・セネキオに献呈されています。ちなみにこの人は、献呈相手として、登場回数ナンバー1です。

さて、アルキビアデスが言うように「真実に進歩を遂げた人ならば、善き人間の行いと自分とを比べて、自分に欠けている点を知って痛みを覚えると同時に、希望と憧れによって喜びを抱き、とどまることをしらぬ衝動に満たされる。」などは、目標と現在の自分とのギャップを埋めるという考えにつながっていますでは、いかにして自分の「進歩」に気づくか?学習、言論、行為、情念の軽減、熱意と行動の動機づけなど、プルタルコスは様々な「進歩」をどう自覚するかを語っています。倫理は点数で計るものではないから 倫理的な進歩のしるしを、どうやって認識するかについての プルタルコスの様々な提案は、現代においても示唆的ではないでしょうか。気楽に読める古典として、プルタルコスは入り口にぴったりです。

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この記事を書いた人

・現役世代を元気にしたいとの思いで新ブログを立ち上げ!
・本は2000冊以上読破、エッセンスを還元いたします
・金融機関で営業・調査部隊双方を経験。
・バックグラウンドは歴史とMBA

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