人生も経済情勢も整理できる経済エッセイ:「超」整理日誌(1) 野口悠紀雄、新潮文庫

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野口悠紀雄教授の「超」整理日誌は週刊ダイヤモンドに連載中の2ページのコラムです。高校時代の赤点脱出の励みにもなった「超」勉強法 を読んで以来、野口先生の本を愛読してきました。

「超」整理日誌を読み返す効能は、(昭和生まれにとっては)自分の生きてきた時代を振り返りることができるからです。自分が生きてきた時代のことも「整理」して考えることができます。もっと若い方も当時の経済情勢に関してリアルタイムで読むことで実感が湧くでしょう。

「超」整理日誌の第1巻は隔週で連載を開始した1995年の分を収録。「はやりことばの盛衰」「出来事年表」がついていて世相を振り返れるのもこの本の特徴です。当時は円が1ドル87円…住専処理のような経済の問題のみならず、扱うテーマは多岐にわたっています。「大蔵省をたくさん作ろう」などタイトルだけでも愉快なエッセイをはじめ、使われ始めた携帯電話の話、終末論に、イタリア紀行、経済学者ジョークなど、話題は盛りだくさん。インターネットや情報に関する話題は、今日でもなされているような議論に言及していて、中には95年当時に書かれたとは思えない部分もあります。

野口教授は、大蔵省にも務めていたことがあり、当時の経験を生かした「大蔵省版万能スピーチ術」も面白いです。「世の中は縦糸と横糸から出来ています」からはじめるというものです。これは中々便利で応用が効きます。スピーチをする機会があったら使ってみてはいかがでしょう?

一方で、「極意・万能論文作成術」では、このとおりにすると典型的な”学者”の論文になってしまうからくりになっており、強烈な皮肉です。

筆者が榊原英資氏とともに、アメリカへ予算制度の調査旅行をしたときの英語で困った四方山話も面白かったです。また、大蔵省にまつわる英語失敗談も笑ってしまいます。オットセイ、そしてelectionとerection…

さらに、この間では野口教授の意外な側面も見られます。星空や文学、音楽を愛する一方で、地図にかなりの執着(?)を持っています。しかも「風の谷のナウシカ」に関する論考まで、巻末に30ページ以上に渡り掲載されていて、野口教授の幅広い興味の対象が、この本にはちりばめられています(しかも映画ではなく、アニメージュに連載された宮崎駿の原作というあたり、かなりの通だ)。

以下のように締めくくっていて、ノリノリ(?)な野口教授を垣間見ることが出来ます。

危機は壮大な悲劇として生じるのではなく、
退屈な日常の中で進行する。

それに対処するのに英雄的な指導者など必要ない。
必要なのは、終末が訪れぬ世界、いつになっても終わらぬ世界において、
人々を壮大なイメージで奮い立たせるのではなく、
実務のレベルで地道に問題を処理することだ。

それゆえ、ファンタジーの世界に理想の指導者を見出した我々は、
彼女をファンタジーの世界に閉じ込めたままにしておこうではないか。
そう考えれば、心置きなく次のように言うことができるであろう。
「われらがクシャナ殿下に、歓呼三声!!」

連載で読んでる人もそうでない人にも、是非一読してほしい。文芸エッセイをふだんよく読む人にも、自信を持って勧められる一冊です。

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この記事を書いた人

・現役世代を元気にしたいとの思いで新ブログを立ち上げ!
・本は2000冊以上読破、エッセンスを還元いたします
・金融機関で営業・調査部隊双方を経験。
・バックグラウンドは歴史とMBA

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