たったこれだけ!あなたが「言いたいこと」を伝えるための5つの手順:「その言葉だと何も言っていないのと同じです!」日本実業出版社 、吉岡友治

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その言葉だと何も言っていないのと同じです!」(日本実業出版社 、吉岡友治)は一見煽り気味のタイトルですが、良書です。しっかりとものを考えるにも、意見を伝えるためにも、必読の一冊です。世の中には安易でふにゃふにゃした言葉で収め、煙に巻く表現で満ち溢れているなか、本書はロジカルに意見を述べるための具体的な方法論が明快に提示されてます。しかも、読み物としても非常に面白いばかりか、ただの文章の方法論の域に収まらず、本書の鋭い指摘は社会論の域に達しています。その点についても大変興味深いので後日また紹介します、

著者は、小論文メソッドの第一人者であり、長年にわたって大学受験、ロースクールやMBA志望者などを対象に、文章・論理の指導を行なっています。学生時代に読んだ「社会科学系小論文のトレーニング12の「理論モデル」×書き方のコツ×入試問題」も非常に参考になった思い出があります。今日は、しっかりした「主張」を伝えるための5つの手順をお伝えします。

目次

中身のない言葉=マジックワードに逃げるな!

著者によると、何千何万という文章の添削指導をしてきた過程で、「何を書けばいいか?」と困った人たちが共通して使うフレーズがあるそうだです。すなわち、「中身のない言葉=マジック・ワード」である。それを使うと、一瞬わかった気がするが、実はかえって文章を混迷させ、内容のレベルを下げる言葉、ステレオタイプの言葉、手垢にまみれた言葉、それがマジック・ワードの原点だと言います。

そうした「中身のない言葉=マジック・ワード」の例を挙げるなら、たとえば「1人ひとりができることをする」「悩ましい問題である」「意識改革をすべき」「組織一丸となって」「もっと向き合え」「断固たる決意で臨む」などがあります。一見何かを言っているようだけれど、中身のない言葉で意見がまとめてけむに巻くケースは少なくありません。このような思考停止に陥り、論理力の弱体化につながる言葉が「マジック・ワード」なのです。

では、会議、プレゼン、論文・レポート等において、思考停止のマジック・ワードに逃げ込まないためには、どうすればいいでしょうか?その答えは、論旨明快に「主張」をはっきりすることです。「主張」とは、端的に言えば、「理由」+「例示・データ」+「結論」の3点セット、です。どういう手順で考えればいいかについて、筆者は5つのポイントを上げます。順に内容を引用しつつ、解説を付け加えていく。

手順①まず言葉を定義しよう

・思い込みから自由になる ・首尾一貫した流れを作る
・問題と解決の形に整理する・「である」と「べき」を混同しない

まずはこの4つを抑えましょう。雰囲気だけで書くと、言葉によっては誤読を招くばかりか、SNSの時代、違った趣旨でますます独り歩きしてしまう可能性すらあります。言葉自体の意味に加え、自分にとっての意義・評価をしっかりと考え、意見や行動の指針にする必要があるのです。さらに、「隠された前提」「明示されていない含意」が言葉には知らず知らず含まれる点も留意しなくてはなりません。暗黙の判断や意義付けに無自覚だと、足をすくわれてしまいます。

事実と願望を混同しないことも重要です。事実と願望を混同すると、非現実的な解決に固執するようになり、問題はさらに紛糾するという悪循環に陥りやすいからです。現実を冷静に見た上で発想することで初めて有効な意見が生まれます。既存メディアの報道が、こうした罠に陥っている例は、思い起こせば多々あるでしょう(とはいえ、彼らも原稿の締め切りがありますからね、なかなか大変でしょう。だから、私たちは時間に追われてるんだなとか、社の方針でこういうバイアスの意見で紋切り型に締めくくったんだな、とかちゃんと見抜けるようにしましょう。

②首尾一貫して考えよう

・話題は必ず一貫させよう ・つなぎ言葉に注意する
・問題に対して立場を明確にする・問題の形は3つだけである

みんなが気にしている話題に対して、自分なりの意見・主張を述べることに価値があります。言い換えると、何らかの話題を選んで、自分の立場を鮮明にすることです。

筋道立てて考えるためには、「問題が何か?」という点に対して「どう答えているか」という点が重要なので、読む・書くときには注目してみよう。実は疑問、対立、矛盾の3つのパターンに集約されます。
「…とは何か?(疑問)」→「…とは、…である」
「…と…のどちらをとるか?(対立)」→「…のほうが正しい」
「…のはずなのに、どうしてそうならないか?(矛盾)」→「なぜなら…だからだ」

意見と感想の区別も注意したい点です。たとえば「悩ましい問題である」と書いても、それは感情の吐露であって、意見を言ったことにはならないのです。どう考えたかとどう感じたかを冷静に見つめ、吟味したうえで、意見のほうを主張しましょう。

③主張の正しさは根拠で示そう

・根拠の妥当性を調べる・理由を出して説明する
・言い換えのチェーンを見る・マジックワードは論理展開できない

意見は正解や正答とは異なり、「まだ正しいかどうかがわからない答え」です。根拠がしっかりしている方が、より優れた意見・主張と言えます。理由を述べて説明することで、根拠の妥当性を示し、同調者を増やすことが論理展開です。論理展開とは、最初に述べた理由を詳しく、わかりやすく、言い換えていき、自分の言いたい結論につなげることを指します。

④論理とイメージを対応させよう

・具体例やデータを確認する・論と例の対応をチェックする
・インパクトだけにごまかされない・誇張や編集をチェックする

もちろん、人は理屈だけで動きません。納得させるためには、感覚や感情に訴えかける材料、すなわちイメージも必要です。例示やデータはその役割を担います。この時、論理展開と、データ・例示はしっかり対応させることが肝要です。現実を言語化するには、描写の取捨選択が伴います。その結果イメージが現実からずれていくこともありうるため、読む際も、書く際も誇張されたものになっていないかチェックしておく必要があります。

⑤結論まで同一の内容にしよう

・結論までの流れはすべて同じ内容である・意見が変わったら根拠も変わる
・人格ではなく根拠の批判をする・真のコミュニケーション力は対話力である

結局のところ、意見も根拠も結論も、全部同じ内容を述べているのです。それが首尾一貫しているということです。すなわち、何かの意見を言うことは、同じメッセージを何度も「手を変え品を変え」しながら、繰り返すことです(現代文の授業でもいいますよね、「筆者の主張はかたちを変えて繰り返される」ってやつですね)。したがって、文章の大まかな構成は次のようなかたちになります。まず、言いたいこと(=問題への解決策を簡潔に述べる)=意見・主張ということを述べます。次に、なぜそれが正しいか理由を述べ、詳しく噛み砕いて説明します。さらに例示・データでイメージ付けます。最後に、自分の改めて言いたかったことを噛み砕いて説明します。

まっとうな議論、適切なやり方とは?

批判については、大前提として相手の人格と切り離して行うべきです。相手の悪口を言うことでもなければ、根拠を示さずに疑いをかけて詰め寄ることでもありません(現実には安倍首相がやることは何でも悪くて、野党がやることは何でも悪いと思い込んでいて、考えていない人が多いですよね?)。したがって、適切な批判とは、相手の意見の根拠が成り立たないことをロジカルに示すものです。もちろん、それに対して相手も反論するでしょう。そうしたやりとりの中で互いの意見の妥当性が見えてくるというのが、真に建設的なあるべき批判のやりとり、すなわちまっとうな議論です(とすれば、国会はまっとうな議論が行われていないですね)。

したがって、議論と思考を深めるメカニズムは以下のとおりです。自分の考えを言った後、周囲の人がどう疑問を持つか予想しそれに理由・説明・例示しながら答えていく。さらには、反対意見の因って立つ根拠を根拠を崩す。他人の立場やツッコミを考慮しながら、自分の主張・意見を固めていくことで、強固さが増すのです。

以上が、この本が述べる適切な論理・文章構築の要諦です。社会やメディアの在り方についても、大変面白いので、後日改めて紹介いたします。

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この記事を書いた人

・現役世代を元気にしたいとの思いで新ブログを立ち上げ!
・本は2000冊以上読破、エッセンスを還元いたします
・金融機関で営業・調査部隊双方を経験。
・バックグラウンドは歴史とMBA

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