分かりやすい説明が出来ず困ったことって、誰にでもありますよね?「説明」とは「相手に分かるように説き明かす」ことであり、「分かる」とは「話し手の意図を正しく理解すること」です。したがって、分かりやすくするためには、聞き手が脳内で情報をスムーズに処理できるよう、事前にその負担を減らすことが、話し手や書き手には求められます。本書はプレゼンやビジネスレターなどあらゆる「説明」のシーンにおいて役立つ15のルールをまとめていますが、ここでは特に重要な3つのポイントに集約して要点を説明します。
第1のポイントは、冒頭で全体の概要を話すことです。冒頭で全体の概要を話すことが重要な理由は、説明したい内容の「結論や全体像」「展望」を示すことで、説明する内容が聞き手の脳内で整理されるからです。また、説明中も時々「現在地がどこか」を示すのもコツです。説明にあと5分かかるのがあらかじめ分かっているのと、ただ漫然と説明が続く状態では、聞き手の理解度、集中度、負荷が大きく異なります。先の「全体像」を初めに提示し、時々「現在地」を示すことで、聞き手を迷わせず、不安を与えないことは、プレゼンのみならず広義の説明において、とても重要な配慮と言えます。
第2のポイントは、論点設定の明確化です。抽象性の弊害は「範囲の不確定」です。仕事に限らず日常生活には、範囲が不確定な悪玉抽象性を含む説明や表現があふれています。たとえば、「なるべく~」「すごく~」などです。したがって、分かりやすい説明にするための指針を考える必要性があります。具体的には、①意識して範囲指定する、②範囲を推測可能にする具体例を挙げる、③小分類名で語る、の3つです。「何をどこからどこまで」述べるのかをきっちりさせたり、指示においては期限を区切ったり、副詞や形容詞ではなく具体的なデータで示すなど、説明に際しては明確さを意識しましょう。
第3のポイントは、「全体」と「部分」のバランスです。言い換えると、概要の説明と具体的な説明です。物事を理解するには「全体」と「部分」の2つの視点がありますが、それぞれ「具体性」と「抽象性」に密接に関係しています。「部分」を理解するのに必要となるのが具体的説明であり、「全体」を理解するのに必要となるのが抽象的説明です。したがって、説明を理解してもらうためには、「部分」と「全体」、「具体性」と「抽象性」の両輪が必要なのです。様々な物事の本質を簡潔にまとめる抽象的説明、事例などを通じて納得感を示す具体的説明のバランスが、分かりやすい説明の基盤となります。
以上で、「分かりやすい説明」について、3つのポイントに凝縮してみました。本書のサブタイトルは、「最強のプレゼンテーション15のルール」とやや大げさですが、一つ一つは意識していけば習得できる内容です。仕事や家庭生活、SNSなどあらゆるシーンで「分かりやすく説明」することが求められる現代、しっかりと自分の意図を伝えたい気持ちを持っている方は、読んで損はない1冊です。