飾り気ない剛直な表題が示す健康に効く食品5つ、健康に悪い食品3つとは?:「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」津川友介 、東洋経済新報社

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「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」というそのままのタイトルにしたがって、結論から紹介しましょう。本当に健康によいと考えられる食品は、魚、野菜と果物、茶色い炭水化物(玄米や蕎麦、全粒粉を使ったパンなど、炭水化物のうち精製されていないもの)、オリーブオイル、ナッツ類の5つです。一方で、健康に悪いのは、赤い肉(牛肉や豚肉)・加工肉(ハムやソーセージ)、白い炭水化物(精製された白米、うどん、パスタ、小麦粉を使った白いパンなど)、バターなど飽和脂肪酸の3つです。どうでしょうか?非常にシンプルですね。医療政策学者かつ医師でもある著者が、膨大な研究論文からエビデンスを読み解き、整理した結果なので、信頼性の高い内容です。まさに科学的知見の集大成です。

とはいえ、シンプルな結論のみでは味気ないですね。健康な食事のために役に立つ考え方や理由を補足していきます。まず、 健康のためには食品の「成分」だけに着目すべきではないというのは重要な指摘です。ともすると、テレビ番組や健康食品、食材については「成分」軸で語られがちです。この成分が体にいいから、この成分が入っている○○を食べましょうと行った具合です。しかし、実際には食品全体としては身体に良くても、成分だけを取り出して摂取すると逆効果のこともあるため、「食品」軸の考え方のほうがより実際的と言えるでしょう。

「糖尿病」のリスクが思いのほか高いのも驚きでした。たとえば、フルーツジュースを1日あたりコップ1杯分=1単位多く摂取する人ほど、糖尿病のリスクが7%高くなるという観察研究のメタアナリシス(複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析すること)があります。果物には血糖値を上げる果糖と同時に、血糖値の上昇を抑える食物繊維も含まれていますが、フルーツジュースでは果糖のみを摂取することになります。加工された結果、こうした状態が生じるのです。

加工肉の摂取量が多いほど、全死亡率、脳卒中や心筋梗塞など動脈硬化による死亡率、がんによる死亡率は上昇します。このことは数多くの研究結果から明らかです。とりわけ、赤い肉や加工肉の摂取量が多いほど、大腸がんのリスクが高まる傾向が認められており、大腸がんは食の西洋化の影響もあって日本人に急増しています。赤い肉や加工肉はなるべく控え(美味しいけどね……)、魚や鶏肉を摂取するほうが、健康にとっては望ましいと言えそうです。

健康には肉より魚、はわかりやすい話ですが、なぜ健康に良いのかと言うとなかなか思いつかないですよね?魚と健康の関係については、魚の摂取量が多い人ほど死亡するリスクが低くなるとわかっています。12の観察研究を統合した欧州のメタアナリシスによると、1日60グラムの魚を食べていた人は、まったく食べない人より死亡率が12%低かったそうです。また、別のメタアナリシスでは、1日あたり85〜170グラムの魚を摂取すると、心筋梗塞による死亡リスクは、ほとんど魚を食べない人と比べて36%低下することが明らかになっています。この要因として考えられるのが、魚に含まれるオメガ3脂肪酸の摂取が、心筋梗塞など動脈硬化の再発予防につながるからです。このことを示すランダム化比較試験もいくつもあり、他のメタアナリシスでも、魚を食べることで乳がんや大腸がん、肺がんになるリスクを下げると示唆されています。

健康に悪い食品を、健康に良い食品に置き換えてバランスを調整する。健康のための食事の要諦はとてもシンプルですね。ややデータ目線で書きすぎているため、メカニズムの叙述などには物足りない面もありますが、総論としてはシンプルな方向性をあなたの食事にもたらしてくれるのではないでしょうか。「食の断・捨・離」を始めるのにちょうどよいアドバイスをくれる1冊です。本書はKindle unlimitedで無料で読めるので、あなたの健康の第1歩のため是非ご一読を。

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この記事を書いた人

・現役世代を元気にしたいとの思いで新ブログを立ち上げ!
・本は2000冊以上読破、エッセンスを還元いたします
・金融機関で営業・調査部隊双方を経験。
・バックグラウンドは歴史とMBA

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