成功する転職の3つのシンプルな発想法とは?:「 転職と副業のかけ算 生涯年収を最大化する生き方」moto、扶桑社

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ここ数年、コロナ禍の前から「攻めのリストラ」と称して、業績堅調にもかかわらず人員整理を行う企業のニュースを耳にした人は多いでしょう。つまり、「大手企業に所属していること」と「大手企業で生き残ること」はもはや別の問題です。したがって、「自分はいつだって転職できる」「どんな環境でも、自分でお金を稼げる」「給与以外に収入がある」という状態を実現していくことが本当の意味での安定に繋がります。こうした精神状態や仕事の能力を確保することが、今いる場所でのパフォーマンス、他の職場でのパフォーマンスに影響を与えます。

本は、実体験を学ぶ良いツールです。「 転職と副業のかけ算 生涯年収を最大化する生き方」の著者moto氏は、著者は、4度の転職を経てベンチャー企業で営業部長を務める傍らSNSなどの手段を使って副業をし、総年収5,000万円を稼ぎ出しています。セルフ・マネジメントと行動力をもとに、日々キャリアの棚卸を行い、万が一今の会社を辞めざるを得なくなったときのための備えも怠らないという姿勢の賜物です。

著者の根幹にあるキャリアビジョンは、「サラリーマンでいること」のメリットを享受しながら、個人でお金を稼ぎ、生涯年収を増やすというものでした。なぜなら、サラリーマンとして得られる経験には大きな価値があるからです。サラリーマンとして働いた経験や知見は、個人でお金を稼ぐための「素(もと)」になります。実際、著者の4000万円の副業収入は、サラリーマンとして働くなかで得た知見や経験、自分自身の転職経験などを発信することから得られているのです。「自分の経験値」を積むことを意識し続け、誰よりも「自分を成長させる機会」をもらう努力をしているかどうかで、”サラリーマン人生”をどれだけ有意義なものに出来るか差が付きます。

とりわけ、印象に残った点は転職についての考え方でした。著者の人生を再現することはそうは叶わないと思いますが、その一方で「転職(もちろん、新卒の就職)」に対する戦略的な考え方は、いずれは新たな職場で働きたいと考える人には大いに参考になります。ここでは、「転職市場における市場価値」=生産性、転職の基本方針「軸ずらし転職」、「採用するメリット」の3つについて、ご紹介します。

目次

「転職市場における市場価値」=生産性の5要素

転職活動で重要なものは何でしょうか?情熱、実績、能力、成果、人格、色々ありますが、一言でまとめましょう。それは、「転職市場における市場価値」です。市場からの評価は、自分の生産性を高めることで上がっていくと筆者は説きます。生産性とはすなわち、会社の業績を伸ばすための本質を見極めて、効率的に行動する力のことです。生産性は、次の5つの要素に分解できる。

  • 論理的な思考ができる力
  • 構造的に物事を捉える力
  • 物事を俯瞰したうえで、課題を特定する力
  • 課題に対して仮説を立て、誰にでもわかりやすく話せる力
  • 上記4つを用いて組織をマネジメントする力

年収1000万円を超える求人の多くに、この5つが必要となると4度の転職を経験した筆者は見ています。とはいえ、これらは決して特別な能力ではありません。普段の仕事を通して、誰もが身につけられるものです。特別な経験や実績といった抽象的なものを思い浮かべるよりも、地道にこの5つの力を高めていくことが肝心です。「急がば廻れ」なのです。

転職の基本方針「軸ずらし転職」

著者は4度の転職によって大きく年収を上げてきましたが、そこには方法論がありました。その方法論とは、「軸ずらし転職」です。すなわち、読んで字の通りのとおり、年収の高い業界や職種に軸をずらすというものです。年収は、日本の雇用市場においては、個人の才覚よりも、「職種×業界」で大枠が決まるほうが大きい構造になっています。したがって、転職で年収を上げるには、業界か職種のどちらかの軸を「年収の高い業界」または「年収の高い職種」にずらすのが近道になります。特に、業界は年収に大きく影響します。年収レンジの高い業界は、商社やコンサル、金融、通信、広告など、「動くお金が大きく、かつ利益率が高い」業界です。業界別平均年収ランキングを参考にしたり、これから伸びる業界や産業について知識をつけたりするのもいいでしょう。新卒の際に使える方針ですね。

「採用するメリット」を打ち出す2つのポイント

どのポジションであっても、面接で伝えるべきポイントがあります。「自分を採用するメリットを打ち出す」ことです。

まず、第1に伝えるべきポイントは「何ができる人なのか」です。一見すると社内での実績のことかと思いがちですが、むしろ伝えるべきはその奥にある「自分は何をしてきたか」ということです。自分が実行したアクションの「深さと濃さ」を伝えることが肝心です。たとえば「毎月XX件の商談を獲得した」実績があるのなら、架電件数を人のX倍に設定した、電話では課題を聞き出すトークを行ったなど、「どのくらい」「どのように」「何を」を明確にして伝えると説得力が増し、よりアピールできるのです。

もう1つのポイントは、「再現性の高さ」です。面接する側としては「この人がどれだけすごいか」ではなく、「この人がうちに入社して、同じように活躍できるか?」に注目します。一緒に働くことになるのですから当然ですよね?したがって、「これまでのキャリアで経験したことを、御社でこう活かすことができる」という再現力を伝えましょう。そのためには、想像力が必要です。新しい会社で自分が働く姿を「映像」にできるまで想像してみるのがコツだと筆者は説きます。そうすれば、今までの経験やスキルをどう活かせるかが具体的にイメージできるはずです。

以上で、本書で最も応用が効きそうな、成功する転職の3つのシンプルな発想法についてまとめてきました。全体として面白い本書ではありますが、どの程度再現性がありそうかという点や副業については疑問符が付きます。しかしながら、仕事や転職などにおける「考え方」という点においては得るところが多いと感じました。副業にするにしても、本来の仕事をから得られるものを得た上でのことであるという考え方は、地に足がついています。漫然と働くのではなく明確な意識を持って働くだけで、今の仕事は能力と可能性をステップアップさせてくれるのではないか、そんな気持ちにさせてくる1冊です。

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この記事を書いた人

・現役世代を元気にしたいとの思いで新ブログを立ち上げ!
・本は2000冊以上読破、エッセンスを還元いたします
・金融機関で営業・調査部隊双方を経験。
・バックグラウンドは歴史とMBA

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