「女の機嫌はわからない」、そう思う男性諸兄はきっと多いですよね?しかし、脳科学の観点から、女性の脳の仕組みに近づくことはできます。人工知能研究の過程で、男女の脳はとっさの信号特性が違い、ときに全く別の装置となりうることが明らかになっています。典型的な違いの1つは、会話の紡ぎ方であります。男女の脳の間には、たしかに深いミゾがありますが、このミゾの幅は案外狭いため、言葉の架け橋で男女の気持ちをつなぐことは可能なのです。5つのポイントをまとめてみました。
なぜ、女性の言語能力は優れているのか?
脳の性差は、右脳と左脳を連携させる神経線維の束(脳梁)が女性脳のほうが太いことに起因します。そのうえ、女性脳のほうが連携の頻度と密度が高いのです。右脳は「感じる領域」、左脳は「顕在意識と直結して言葉を紡ぐ領域」と言われますが、、右脳と左脳の連携がよい女性脳は感じたことが、次々に言葉になって意識に上がってくるのです。これが、女たちが察する天才であり、臨機応変に行動できる理由です。そうした女性の言葉を操る能力に少しでも対応するためには、女性の思考プロセスや対話スタイルに順応する必要があります。
男性諸君、女性と一緒にいる時は気を引き締めろ!
著者は感性の領域に踏み込む人工知能エンジニアとして、男女の対話を徹底的にシミュレーションしてきた結果、男女の対話スタイルの違いに気が付きました。女性は、ことの発端から時系列に沿ってプロセスを語りたがる一方、男性は、最初に話のゴールを知りたがるのです(私も、少なくとも何の話題なのか、目的が何なのかは知りたく思います)。また、画像認識システムをつくるに際、男女の視点の運び方の違いにも気づきました。男性は遠くと近くを交互に見て、ものの輪郭と距離感をつかむ一方、女性は比較的近くにあるものの表面をなめるように見て微細な変化も見逃さないのです(なるほど、どうりで冷蔵庫にジャムを戻した時、ちょっとでも位置が違うと指摘されるわれるわけだ……)。このため、たとえばデートをする際、女性は男性が注意力散漫に見えてしまい、自分に集中してくれておらず、愛が足りないと勘違いしてしまうことにもなりかねないのです。
女性と男性の思考プロセスの違いとは?
女性の対話は「プロセス指向共感型」である点も留意すべきポイントです。特徴としては、「思う存分経緯を思い出すこと」です。女性の思考プロセスは、五感をフル回転して認識した状況をリアルに再体験し、経緯をこと細かに話すなかで、答えが見えてくるというものです。したがって、話の腰を折られると、真実を探る演算が中断されてしまうのです。しかし、逆に共感によって上手に話を聞いてもらうと、演算の質が上がります。これに対して、男性の対話は「ゴール指向問題解決型」です。男性は、全体の幹をシンプルにとらえようとします。原始時代には、長らく狩りを担ってきた性だからでしょう。男性の思考プロセスは、全体を俯瞰して、ものの位置関係と距離感を正確に把握しようとし、公平性を重視するものです。そのため、女性の、着地点のわからない話に寄り添うことは、男性にはかなり難しい行いです。つい、男性が「何がいいたいんだ?」「結論は?」と女性の話を遮ってしまいがちなのはそのせいなのです。
まずは一言の共感から、応答してみよう!
女性に接するときは、とにかくまずは共感を示すこと。男性脳にとっては正しいはずの「いきなり指摘、いきなり問題解決」は、それが正しいとしてもたいてい仇になるものです。もちろん、何でもかんでも共感していると軽く聞こえてしまいますから、著者が言うさじ加減としては「ほどよく共感、ちょっといじる」くらいがコツです。とりわけ、職場では無駄な時間を省くために、すぐさま問題点を突き、一気に解決をめざすことが求められるますが、その場合でも、たとえば何か問題点を突く前に「いいアイデアだね」「そうだね」「なるほど」という一言があるのとないのとでは大違いでしょう。ひとまずの共感を示されたあとに、建設的な提案や前向きな指摘をもらえたら、受け入れやすいのは男性でも一緒ですよね。私も入社した際の研修で、自分の考えを言う前に一言挟む「クッション言葉」の有用性を教えてもらったのですが、お客様とのコミュニケーションに非常に役に立ったなと今でも感じています。
気持ちに寄り添う>正しく、客観的な事実・理由を示す
察する天才・女性の脳と、目の前の事象に意識が届きにくい男性の脳という違いがある以上、男女が一緒にいれば女性の機嫌を損ねる場面は当然出てきます。女性に謝るときの鉄則は、客観的な事実や理由を示して前向きな問題解決をするために謝るのではなく、女性の気持ちに言及して、真摯に謝ることです。たとえば待ち合わせに遅刻し、彼女を20分待たせてしまったとしましょう。この場合のポイントは、彼女の20分の「気持ち」を慰撫することになります。女性脳は、遅れてきたという結果よりも、心細い思いをしたプロセスを重視するからです。したがって、客観的な事実や理由を示す「20分も待たせてごめん」、「電車が遅れちゃってごめん」ではなくて、気持ちに寄り添う「寒かったでしょう? ごめんね」のほうがベターです。
以上で、5つのポイントを見てきました。一足飛びに女性を理解することは出来ませんが、脳の性差を理解することから始めることで、少しでも女性の気持ちに寄り添い、関係の改善に役立つことを願っています。もちろん、「女の機嫌の直し方」は女性が読んでも役に立つかと思います。男が直してくれなら、自分で治すという考え方もありかもしれません。なんにせよ、脳の仕組みを改めて知ることで、考え方の癖を意識して話すことができ、男性とのコミュニケーションがより良くなることでしょう。本書を素案にした映画版もあるようです。男女の関係を改善するサプリメントとして、本書を摂取してみてはいかがでしょうか?