コロナワクチン完成前に押さえておきたい基礎知識:「免疫力を強くする 最新科学が語るワクチンと免疫のしくみ」宮坂昌之、講談社ブルーバックス

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新型コロナウイルスが未だに世界で蔓延するなか、米国は「ワープ・スピード作戦」の一環として製薬7社と協力のもと、日夜ワクチン開発を急いでいます。同作戦関連企業のニュースが近頃の株式相場のセンチメントを左右しているのはさておき、早く完成が待ち望まれます。さて、「免疫」「ワクチン」とはそもそも何だったでしょうか?その疑問にやさしく答えてくれるのが、講談社ブルーバックス「免疫力を強くする 最新科学が語るワクチンと免疫のしくみ」です。さっそく見ていきましょう。

まず最初は、私たちの体を守る「免疫」からです。人間のからだには、「自然免疫機構」と「獲得免疫機構」という2種類の免疫のしくみが備わっています。「自然免疫機構」は、生まれつきからだに備わっており、粘液や唾液などのバリアーや白血球が、病原体の働きを弱めたり病原体を殺したりします。これに対して、「獲得免疫機構」は生後に獲得される免疫で、自然免疫機構を突破した病原体への対抗策と言えるでしょう。獲得免疫機構には学習効果があり、リンパ球が、以前に侵入した病原体を覚えていて抗体などを用いてこれを撃退する仕組みです。よく出来ていますね。

この二重の防衛機構をも突破し、体内に侵入してくるウイルスなどの病原体には、感染を防ぐため、免疫系を刺激するワクチンが必要になります。ワクチンとは、病原体の力を弱めたり、なくしたりして、人工的に作り出した製剤のことです。したがって、感染症ごとに異なるワクチンがあります。ワクチンは、自然免疫系と獲得免疫系の両方を刺激します。さらに、獲得免疫系に対し免疫記憶を与えることで、特定の病原体に対し「出動待機状態」を作り出すことができます。つまり、事前に体の防衛体制を強化しておくのです。

病原体による感染を防ぐために、あらかじめワクチンを接種することを「予防接種」と呼びます。日本脳炎やはしかなど数多くの感染症に対するワクチンの開発が進み、その有効性が確立されてきました(ジェンナーの天然痘なども有名ですね)。つまり、科学的な免疫力増強法は、ワクチン接種ということになります。ワクチンは、インフルエンザやなど引き起こされる感染症ごとに異なるものを接種する必要があります。また、血管系やリンパ系における細胞の往来をスムーズにすれば、免疫力が高まるとも指摘しています(俗に、免疫力を高めると言えば、最終的にこのような行為のことを指しているわけです)。

ウイルスは、0.1マイクロメートル以下と小さく、非常に小さなウイルスは、10マイクロメートル以上の網目をもつ通常のマスクで防ぐことは難しいと言えるでしょう。ウイルスは生命の最小単位とされる細胞を持ちません。自分でエネルギーを作ることができないので、宿主細胞の中に入り込み、増殖します。また、ウイルスには、抗菌薬は効きません。一部の抗ウイルス剤が効果を示すものの限定的です。よって、最終的には自分の免疫力で排除する必要があるのです。「ウイルス」については、コロナウイルスを理解する”第1歩”!:「新しいウイルス入門 単なる病原体でなく生物進化の立役者?」武村政春 、講談社ブルーバックスの記事も併せてご参照ください。

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この記事を書いた人

・現役世代を元気にしたいとの思いで新ブログを立ち上げ!
・本は2000冊以上読破、エッセンスを還元いたします
・金融機関で営業・調査部隊双方を経験。
・バックグラウンドは歴史とMBA

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