“正義中毒”から抜け出し、脳を再活性化する7つの方法とは?:「人は、なぜ他人を許せないのか?」中野信子、アスコム

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インターネットが普及した今、世の中の出来事を知るのは非常に簡単になりましたが、一方でSNSなどでの「炎上」事案など、不祥事あるいは不用意な発言が(時には誤解も交えて)瞬く間に延焼が広がってしまう時代になりました。特に芸能人のスキャンダルなどは格好のネタと言えるでしょう。そんな時には、問題の当事者でもないのに、行き過ぎたコメントもあるわけで、なぜ直接の利害関係を有しないのにそこまで攻撃的になれるのだろうかという疑問もわきます。

自分や身近な人が直接不利益を受けたわけでもなく、面識もない相手に攻撃的な言葉をあびせ、叩きのめさずにはいられない。もし仮に、あなたにそんな状態に陥っているとしたら、それは正義に溺れ、「許せない」という感情が暴走している状態です。著者はこれを「正義中毒」と呼びます。

なぜ、人は人を許せなくなってしまうのか?それは、人間は脳の構造上、自分の属している集団以外を受け入れられず、攻撃しやすい傾向にあるからです。筆者は、社会全体で「正義中毒」の方向へと突き進むと、多様性を狭めてしまうことになり、非常に危険であると考えています。さらに、正義中毒から自分を解放させるには、普段から前頭前野を鍛え、メタ認知の力を身につけることが重要となると主張しています。今回の記事では、「正義中毒」に陥らないため自覚しておくべき3つのポイント、生活のなかで前頭前野を鍛えるための4つの方法を紹介していきます。

目次

「正義中毒」に陥らないための3つのポイント

「正義中毒」は誰しもが簡単に陥る可能性がある。とりわけ、ネットやSNSの世界では顕著です。「正義中毒」に陥らないためには、3つの点を自覚しておくことが重要です。


第1に、人間は本来、自分の属している集団以外を受け入れられず、攻撃するようにできている点を自覚しておくことです。正義中毒に陥っているとき、脳内では、神経伝達物質のドーパミンが分泌されている。ドーパミンは快楽や意欲をかきたて、気持ちいい状態をつくり出していきます。他の集団を攻撃すればするほど、ドーパミンによる快楽を得られるため、他者を「叩く」のがやめられなくなるというわけのです。自分と異なるものをなかなか理解できず、互いを「許せない」と感じてしまう正義中毒は人間の宿命であり、理性によってこの宿命と付き合ってきたのが人間の歴史でもあります。そもそも人間の脳は誰かと対立するようにできているのだと自覚しておけば、一歩引いて、冷静な判断が出来るでしょう。

第2に、人間は誰しも、集団内の仲間を外の人よりも良いと感じる「内集団バイアス」を持っており、安易なレッテル貼りで脳は手抜きをしやすいことです。「私達」と「あいつら」に二分化して考える癖を持っている人って、意外に多くありませんか?、グループ外の集団には、バカなどというレッテルを簡単に貼り付けてしまうのは、根源的な悪意をもっているというよりは、ただ脳が手抜きをして、バイアスに乗っ取られている状態にすぎないことのほうが多いのです。つまり、本来なら一人ひとりの背景や考え方を考慮に入れて丁寧に判断するべき状況でも、ひとくくりにしてグループ外の人々を一元的に処理するほうが脳がかける労力が少なく、コストパフォーマンスが高いのです。自動的で楽な処理、すなわち一元的な処理は迅速な判断が必要なときに便利ですが、脳がいわば手抜きをしている状態なのです。

第3に、脳は賢くなりすぎないようにできていることです。筆者は人間が人間であり続けるため、脳は前頭前野に従いすぎないようになっているのだと言います。。つまり、脳は「賢くなり過ぎない」ように設計されているのです。たとえば、女性と出産の関係について考えてみましょう。出産という行為はリスクを伴うことなので、女性が自身だけの生命維持を最優先させるならば、出産を選択しない方がよいでしょう。しかし、それでは種としての人間が絶えてしまいます。そのため、前頭前野ではコントロールできないような愛情や性欲、子どもへの愛着が強くなるよう仕組まれているのです。よくできてますね。

生活のなかで前頭前野を鍛えるための4つの方法

「正義中毒」に陥らないための3つのポイントを踏まえて、「人を許せない」状態から解放されるための科学的な方法や脳の鍛え方とはどのようなものでしょうか?脳の前頭前野は分析的思考や客観的思考を行う場所であり、人を「許す」ための大きな足がかりとなります。前頭前野がうまく働いていれば、日頃から固定観念や偏見を鵜吞みにせず、「メタ認知」を使うことができます。メタ認知とは、自分自身を客観的に認知する能力のことです。つまり、「自分がこういう気持ちでいることを自覚している」という、あたかももう1人の自分が自分の状況を冷静に認知出来る状態です。このメタ認知を働かせることが、前頭前野を鍛えることにつながり、正義中毒を乗り越えるのに役立ちます。

「老けない脳」をつくるための4つの方法を筆者は紹介しています。1つ目は、「慣れていることをやめて新しい体験をする」ことだ。たとえば、「通勤で自宅から駅まで向かうとき、いつもと違うルートを歩く」「外食の際に、新しいメニューにしてみる」など、些細なことでかまいません。旅もいいかもしれませんね。日常とは異なる行動が前頭前野の活性化を促してくれます。

2つ目は、「あえて不安定・過酷な環境に身を置く」ことである。若干大げさな表現ですが、自分の思考や行動を認識し直すことができます。たとえば、「普段なら絶対読まない本、関心のない本を読んでみる」「ネットで興味のないニュースなどを閲覧する」といったことでも、異なる環境に身を置くのと同じような体験を手軽に味わうことができます。

3つ目は、「安易なカテゴライズ、レッテル貼りに逃げない」ことだ。「Aは○○だから」「Bって××なんでしょ?」のように、自分たちとは違う人をひとまとめにする習慣はやめましょう。これは、前頭前野を働かせるチャンスを失っていることにもなります。単純なレッテル貼りを気持ちよく感じる裏側には、思考停止=脳の弱さがあることに留意したいと筆者は強く警告しています。

4つ目は、「余裕を大切にする」ことです。前頭前野を働かせるには、脳に余裕がなければならない。この余裕を重視するなら、一般的に忍耐が必要なことは避けるべきだとされています。「満員電車での長時間の通勤を避ける」「前倒しで仕事をすませる」など、心の余裕を生み出す行動を自覚的にとっておくことは非常に重要です。

以上で、「正義中毒」に陥らないための自覚しておく3つのポイント、生活のなかで前頭前野を鍛えるための4つの方法をご紹介しました。人間の宿命にして、さらに現代人の病理として存在感が増す「正義中毒」。「正義中毒」を乗り越えてるには寛容さを取り戻すことが重要です。そのためには、人を許せない自分や他者に対して、「人間だからしょうがない」と認めることが前提です。そのうえでメタ認知の習慣をつけていけば、自分とは異なるルールや考え方をもつ他者に対して寛容に接し、共感できるようになるはずだ。思考停止の習慣から抜け出し、脳の前頭前野を動かすことで、「他人を許せる」心の余裕を持ちましょう。

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この記事を書いた人

・現役世代を元気にしたいとの思いで新ブログを立ち上げ!
・本は2000冊以上読破、エッセンスを還元いたします
・金融機関で営業・調査部隊双方を経験。
・バックグラウンドは歴史とMBA

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