今日紹介する「アカマイ 知られざるインターネットの巨人(小川 晃通 )」はその名の通り、インターネットにおいて私達が実はお世話になっているアカマイ・テクノロジーズを通じて、ネットの仕組みをわかりやすく解説する良著です。「アカマイ・テクノロジーズ」という会社を聞いたことのある人は、米国株式の投資家や一部の業界人以外にはあまりいないのではないでしょうか。実は、一説には、世界の3分の1ものインターネットトラフィックを運んでいると言われています。もしかするとアカマイとグーグルの2社だけで、世界の半分のインターネットトラフィックを発生させている可能性があるといえるかもしれません。そのくらい、重要な企業なのです。
ハイテク株比率の高いナスダックは10000ポイント台の史上最高値ですが、アカマイ・テクノロジーズもこの10年の高値を更新しました(20/7/4現在)。動画ストリーミング配信の隆盛やテレワークの活発化などで、一段とインターネットトラフィックが混雑するこの時代、再評価が進んでいます。私達の便利な生活や仕事を陰ながら支えているのは、この知られざるインターネットの巨人なのです。下記の通り、顧客の陣容は米国だけでも圧倒的です。
アカマイによると、同社は以下の顧客の通信をサポートしています(14年7月現在)。 ・「Global500」にランクインしている企業の3社に1社(*) ・米国メディア&エンターテインメントのトップ企業30社 ・グローバルEコマースサイトのトップ20サイト ・全米トップオンライン小売業者100社中97社 ・米軍の全機関 ・世界の代表的なニュースポータル150以上 ・世界の銀行トップ10行中7行(*) ・米国大手新聞社10社中9社 ・ソーシャルメディアサイト トップ10のうち9サイト ・半導体企業トップ5社中3社 ・大手自動車メーカーのトップ15社中13社 ・グローバルな製薬関連企業トップ10社中9社 ・トップコンピューターメーカー7社中6社 ・すべてのトップウイルス対策企業 ・アメリカの主要スポーツリーグのすべて
アカマイが知られていない理由には、広告というものをほとんど打っていないこともあるでしょう。いわゆるBtoB(Business to Business)の事業者なため、直接の顧客は企業や組織になります。アカマイの主な事業は「データ配信の代行」であり、ネット上を流れる情報を顧客のために迅速に配信することに特化することでひたすら黒子に徹しています。企業のデータセンターからクラウドプロバイダーのデータセンターまで広範に網羅し、企業とそのビジネスを高速、スマート、そしてセキュアなものにしているわけです。しかも、24時間365日で。
本書が書かれたのは2014年ですが、基本的なインターネットの仕組みは変わっておらず、内容もそこまで古びていません。アカマイ・テクノロジーズのビジネスの解説を通じて、インターネットの仕組みや、サイバーセキュリティ(特にDDoS攻撃の説明がわかりやすかったです)やクラウドなどがわかるように書かれていて親切です。プロのITエンジニアには物足りない内容ですが、アカマイに知らないうちにお世話になっている私達ネット利用者には、本書はまさに知識の泉です「アカマイ 知られざるインターネットの巨人」を読破して、「アカマイ(ハワイ語で「賢い」の意味)」になりましょう!