ローマ皇帝の内緒の日記が数百円で読める。良い時代ですね。今日ご紹介するのは「自省録」から3つのポイントです。まずは気楽に行きましょう。高校世界史で、”哲人皇帝”マルクス・アウレリウス・アントニヌスという長い名前に辟易した人は多いでしょう。学生の方は、著書「自省録」の名前も覚えれば、文化史でも得点になります。
しかし、実際に「自省録」を読んでみると、1800年前ものローマ皇帝にぐっと親近感が湧いてきます。「自省録」は私的なメモであり、公刊する意図はそもそもなく、自分自身のためのセルフ・ライフハック集なのです。傑物の考えの一端は覗き見るだけでも実は面白いです。さあ、順に見ていきましょう。
①どんな偉人も人間。ローマ皇帝だってお布団からはそう簡単に出られない
春眠暁を覚えずといいますが、二度寝は心地よいものですよね。しかし、激務に耐えるローマ皇帝は「自省録」に以下のように書いて、自らを鼓舞しています。
第五巻 一 「明けがたに起きにくいときには 、つぎの思いを念頭に用意しておくがよい。「人間のつとめを果すために私は起きるのだ。」
「人間のつとめを果す」という叱咤激励具合がいかにも大げさで愉快です。しかもこれだけでは終わりません。
自分がそのために生まれ、そのためにこの世にきた役目をしに行くのを、まだぶつぶついっているのか。それとも自分という人間は夜具の中にもぐりこんで身を温めているために創られたのか。「だってこのほうが心地よいもの。」では君は心地よい思いをするために生まれたのか、いったい全体君は物事を受身に経験するために生まれたのか、それとも行動するために生まれたのか 。
「だってこのほうが心地よいもの。」思慮深いローマ皇帝といえども、お布団には勝てないのです!?どんな偉大な人物でさえも、結局は同じ人間なのです。哲人皇帝といえども、「行動するために生まれた」という前提をおかないと、お布団の魔力の軛からは抜け出せないのです。そう、行動しましょう!
②頑張って仕事に行くだけであなたは偉いし、ローマ皇帝気分になれる
小さな草木や小鳥や蟻や蜘蛛や蜜蜂までがおのがつとめにいそしみ、それぞれ自己の分を果して宇宙の秩序を形作っているのを見ないのか。しかるに君は人間のつとめをするのがいやなのか。自然にかなった君の仕事を果すために馳せ参じないのか。「しかし休息もしなくてはならない。」それは私もそう思う、しかし自然はこのことにも限度をおいた。同様に食べたり飲んだりすることにも限度をおいた。ところが君はその限度を越え、適度を過ごすのだ。しかも行動においてはそうではなく、できるだけのことをしていない。
要するに、仕事に行くだけであなたは偉いのです。「しかるに君は人間のつとめをするのがいやなのか。自然にかなった君の仕事を果すために馳せ参じないのか」とマルクス・アウレリウスが自身に言い聞かせるくらいなのですから。適度な休息をとって仕事に行く。ローマ皇帝だって、このことを大変に思っています。人間の務めである労働に勤しむべく、気力を振り絞って起き、仕事へ行くのはとっても偉いことなんだと思って、頑張ってみましょう。ローマ皇帝気分になれます。
③「現在やっていることをよくやること」に集中しよう
第六巻-二 君が自分の義務を果すにあたって寒かろうと熱かろうと意に介すな。また眠かろうと眠りが足りていようと、人から悪くいわれようと賞められようと、まさに死に瀕していようとほかのことをしていようとかまうな。なぜなら死ぬということもまた人生の行為の一つである。それゆえにこのことにおいてもやはり「現在やっていることをよくやること 」で足りるのである。
「現在やっていることをよくやること 」は、すなわち、「今、ここ」に集中することです。あれ、これって最近シリコンバレーで流行りのマインドフルネスってやつなのでは…?お仕事の要諦は、案外シンプルなことなのかもしれないですね。
- 哲人皇帝だって朝起きるのは辛い
- けど、仕事に行ったら、偉い!
- 「現在やっていることをよくやること 」に集中する
以上、「自省録」からシンプルなライフハックの考えとして、3つのポイントでした。