小説など娯楽のための読書とは別で、仕事や生活に役立つ情報を得る目的の読書は効率が重要です。「知識を操る超読書術」でメンタリストDaiGo 氏が中心に扱うのは、「スキミング=拾い読み」というテクニック。スキミングによって読む本、読む箇所を減らした上で、読むべき箇所を集中的に読み込み、記憶に定着させ、アウトプットに使えるように自分の言葉で残しておく。このサイクルを繰り返すことで知識を自らの血肉にしていくのです。
まず心がけたいのは、「その本からどのような知識を得たいのか」という「目的」を明らかにして、常に意識できるようにしておくこと。特に、新しい分野の本を読む場合には、初歩的な入門書を読み、基礎知識を身につけて置くことも重要でしょう。①「予測」読み、「要するに」読み、「しつもん」読みの3つを意識、②スキミングによるメリハリの聞いた読書、③メンタルマップの活用の3つの方法はあなたの読書体験を効率的なものにしてくれます。順に見てきます。
「予測」読み、「要するに」読み、「しつもん」読みの3つを意識
1つ目のテクニックは、「予測」読みである。まず、書籍のタイトルや著者のプロフィール、目次、帯などをチェック。そのうえで、自分の経験や知識に結びつけて、これから読む本に書いてある内容を予測します。目次を読み込み「どの章が今の自分に役立つのか」「どこに一番ほしい情報が書かれているのか」も予測しましょう。読み終わった後に、予測していた内容と実際の内容を比較することで、本をより深く明確に理解できるようになります。しかも、読書のハードルが下がるという効能もあります。どこから読むべきかが明らかになるので、本の冒頭から読み始めてたちまち挫折してしまう可能性が低くなるからです。
「要するに」読みにには2段階の使い方がある。1段階目は、本の全体像をつかむために要約する。いきなりじっくり読み込むのではなく、各章を拾い読みしていく。章ごとに「要するに、○○ということが書いてある」とざっくり外観し、端的にまとめてみよう。重点的に読む章を決めたら、続いて2段階目の「要するに」読みに入ります。これは関心を持った章の中から、きちんと自分の中に残しておきたい内容を「自分の言葉」で要約してまとめていく作業です。単なる備忘録ではなく、自分の言葉でまとめて記憶に定着しやすくすることも大切です。
「しつもん」読みである。これは、著者にツッコミを入れるようにして読んでいく方法です。読むという「インプット」に対して疑問を持ち、質問とその回答を作るという「アウトプット」を挟むことで、理解力と記憶力が高まります。書かれている文字を目で追うだけでは、内容の理解度は高まらないからです。考える瞬間を随所に入れることで、本の著者と対話しながら読むことも可能なのです。
速読、多読、選書に関する誤解はスキミングで解決!
スキミングによって読む本、読む箇所を減らした上で、読むべき箇所を集中的に読み込んで行くことは、読書にメリハリをつけ、効率を上げるのに有効です。章の本文をスキミングするときは、文章の「構造」に注目するといいでしょう。ある見出しの導入の部分と、最後の結論の部分を重点的に読んでいきます。要点は導入と結論を読めばつかめるためです。結論部分は、「しかし」や「つまり」などの接続詞の後ろに書かれている場合が多いので、目安にするといいでしょう。注意すべきは、何度も熟読したいような素晴らしい本はスキミングの対象ではない点です。そうした本はスキミングで要点を掴んだ後に、むしろ繰り返し読むべきでしょう。
速読、多読、選書に関する誤解についても言及しています。速読に対する誤解とは、「読書を好きになるには、本を速く読む力が必要。速く読めるようになれば読書量が増え、人生に役立つ読書ができるようになる」というもの。スキミングにより要点を絞って、読むところを決めて普通に読むことで、充分に本は読めます。1週間で1冊だとしても年に52冊も読めるわけですから。次に、多読に関する誤解。「本好きの人は、たくさんのジャンルの本を同時並行でたくさん読んでいる。多読するから興味が広がり、読書の習慣が途切れないのだ」。たしかにそのとおりですが、本好きでなくとも、必要に迫られて必要性に応じた読書をすれば、必要なだけの知識は手に入るわけで、博覧強記の人たちをあえて想定する必要はないでしょう。最後に、選書に関する誤解。「いい本を選んで読むこと。それが最も効率が良くて、身につく読書法に違いない」。当たり外れは付き物と心得てどんどん気楽に読むほうが大切ですし、優れた読書家の選書を参考にする方法もあります。こうした思い込みが、「本を役立てるための読み方」を妨げているのです。
速読、多読、選書に対する上記の誤解は、スキミングにより十分解消可能です。スキミングによって速読や多読に近いことはできますし、熟読に値する本が見つかり、熟読の成果も上がるので、速読、多読、選書の効果を高めてくれます。月平均300冊を読む博覧強記の作家・佐藤優氏は「読書の技法」で、1冊5分の「超速読」により読むべき本と必要ない本を仕分け、その後「普通の速読」や「熟読」へ移行すると述べています。スキミングはあらゆる読書スタイルの手助けになるのです。
読書の道標、メンタルマップでさらに効果倍増!
読書におけるメンタルマップは、読書する際の人の心の動きに着目したガイドラインのようなものです。「なぜ、この本を読もうと思ったのか?」「この本から何を得たいのか?」「読んだ後、どういう状態になりたいと思っているのか?」と自問し、質問に対する自分なりの答えを書き出ておきます。こうして作成したメンタルマップを栞の代わりに本に挟むなど、読書の間、いつでも見られる状態にしておきます。読んでいてよくわからないところに出くわしたときや、集中力が途切れたと感じたとき、読むのが面倒になってきたときなどに見返すと、原点に立ち返ることで本への興味を取り戻せるるのです。
「自分があらかじめ持っている知識」と「本の中に書かれた自分が知らない知識」の差を意識することで好奇心が刺激され、本の内容が記憶に残りやすくなる効果も見逃せません。ノートの見開き左ページに、これから読もうとしている本に関して、自分がすでに知っている知識を書き出しておきます。作業後は本の目次をスキミングして、興味を引かれた見出しを右ページに書き出していきます。自分の知識の延長線上にある未知の新たな情報は好奇心を刺激しますし、「自分が持っている知識」と「本の中に書かれた自分が知らない知識」の差を意識することで、読まなくてもいい箇所を把握しやすくなります。その結果、効率的に知識を吸収できるわけです。
ハジェテペ大学の研究チームが17個の「効果的な質問例」を提示しているので、その中からいくつか選んでおくのが良いでしょう。私が使えそうだなと思った質問例は以下のとおりです。「この本の問題意識は何か?何を解決してくれるのか?」「どのように始まりどのように終わったか?」「自分はこの本で何を学んだか?」「どんな種類の情報を得られたのか?」「この本はなぜ重要なのか」「作者の主張のどこに賛成出来てその理由は何か」「その本の特徴的な点は何か?」「テーマを説明するためにどんな例を出してるか面白かった例は?」
読んだ内容を実生活に反映させるには、本から得た知識を定着させ、あなたや周囲の人のために役立てることが有効です。実際に誰かに教えなくても、教えるという心づもりで読むだけで、記憶への定着率が28%上がるというデータもあるそうで、アウトプットを意識する重要性も大切ですね。日々の仕事や生活への実践に加え、SNSやネットでシェアするのも手です。「知識を操る超読書術」のテクニック集は、あなたの読書の世界を効率良く広げる助けになってくれるでしょう。
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