昨今では、「役に立つこと(スキル)」よりも「意味があること(センス)」が評価されるようになりつつあります。コロナ禍で仕事のあり方や環境が変わるなか、「仕事ができる」とはどういうことか?を考えるには、ちょうどいいタイミングと言えるでしょう。気鋭の経営学者とコンサルタントの豪華タッグの共著、『「仕事ができる」とはどういうことか?』(楠木建&山口周、宝島社)をもとに一緒に考えていきましょう。
仕事の本質とは何か?→自分以外の人に価値を与えること
そもそも仕事とは何でしょうか?出発点は仕事の定義です。楠木氏の定義では、「仕事」とは「趣味」でないもののことです。言い換えると、仕事は「自分以外の誰かのためにやること」です。「自分以外の誰か」は、お客様である取引先や一般消費者だけではなく、上司や部下、同僚など、組織の中にもあなたの仕事を必要としている人たちに価値を与えることができて初めて「仕事」と言えるのです。「仕事ができる人」とは、「自分以外の誰か」に「頼りになる」「安心して任せられる」「この人ならなんとかしてくれる」、さらには「この人じゃないとダメだ」と思わせるような人を指します。言い換えると、「成果を出せる」人です。
仕事できる人とは?→センスのいい人
「仕事ができる人」の特徴はスキルだけでなく、センスがあること。センスが意味があることだとすれば、仕事とは意味があることをすることとも言えるでしょう。センスはスキルとは異なり、示したり測ったりしにくく、標準的な習得の方法がないため、ビジネスでは後回しにされがちです。スキルは正しい方法を選択し、時間を継続的に投入して努力すれば、間違いなく上達するものなので、言語化・数値化して示せますが、センスは説明しにくいからです。センスは、努力と得られる成果の因果関係がはっきりしていません。ただし、センスのいい人の特長は、習慣的に「具体と抽象の往復運動」を行っている点にあると著者は分析しています。具体的な事象を抽象化して得られたロジックをストックしておき、問題に直面したときにその中から解決策を取り出すことができることが、いわばセンスの一端なのです。
センスがある人は「全体感」を掴み優先順位をつける
センスのある人は「全体感」をつかめています。一生懸命がむしゃらに仕事をする情熱は否定しませんが、部分最適の和が全体最適になるわけではありません。ビジネスにおける利益とは、収入からコストを引いたものであり、これを増大させるためには収入を上げるか、コストを下げるか、もしくはその両方の3つしかないわけです。センスのある人はこの3つに繋がる行動を順序付けて取り組みます。一方、センスのない人は、全体が見えておらず、活動が局所化・部分化し、優先順位がつけられない事態に陥りがちです。頑張り方を間違えないように「仕事」をする必要がありそうですね。
新社会人に向けた具体的アドバイス3選
著者が娘に送ったアドバイスが、具体的かつ実践的な基本動作と言えるでしょう。1つ目は「常に機嫌よくしていて挨拶を欠かさない」こと。誰にでも「おはようございます」「ありがとうございました」と声をかけ、「はい」と返事をすること。シンプルですが重要です。先日ご紹介の「介護士からプロ棋士へ 大器じゃないけど、晩成しました 」でも、著者は元気な挨拶によって、人生で度々職を得ています。2つ目は「視(み)る」こと。「これは!」と思えるような仕事ができる人を一人決めてずっと視てみよう。そのうえで、「なんでこの人はこういうことをこの局面でして、なんでこういうことはしないのか」ということを常に考えるのです。答えが出なくても考え続ます。メンターともいうべきポジティブなロールモデルを見定め、観察し、真似てみることで、その人に一歩でも近づくことで成長できます。3つ目は、「顧客の視点で考えろ」。取引先だけではなく、上司や同僚にも「相手が自分に何をしてもらいたいか」「あの人は何を欲しているのか」ということをまず考えてから、それに向けて仕事をすることです。当たり前のように見えて、当たり前をしっかり実践することは大変なのです。
『「仕事ができる」とはどういうことか?』、永遠の命題だと思います。時代や環境、考え方の変化によって変わりうる問題に対しては、日々考えることも大切です。本質に立ち返ることで、あなたの仕事にも好影響があることでしょう。代替が可能な「スキル」の能力だけではなく、代替ができない「センス」の能力をどのように伸ばしていくかで、仕事人生は変わります!