ふわっとした印象論で物事を語る人たち、意外と多いですよね?数字で考える習慣をつけると、大多数の人とはひと味違った意見や分析を生み出すことができます。では、具体的に「数字で考える」にはどうしたら良いでしょうか?『「数字で考える」が簡単にできるようになる本』をもとに、基本の5ステップをご紹介します。
著者の柏原 崇宏氏は経歴からして明らかに「数字で考える」能力に長け、もちろん本書を呼んだ印象においても、噛み砕いてわかりやすく説明してくれています。経歴→東京工業大学、コロンビア大学大学院卒業。マッキンゼー・アンド・カンパニー、外資系投資銀行等で勤務後、現在は動画配信のHuluを運営する会社において、ファイナンス&ストラテジー部長として勤務。証券アナリスト(CMA)。米国公認会計士。
「数字をうまく使える」とはどういうことでしょうか。答えは、「自分の考えを数字で上手にサポートできる」ことです。更に言い換えると、数字を使って正しい考え方に自分を導くこと、その自分の考えを人に対して上手に伝えられることです。具体的には、次の6ステップで実行します。
①問題を設定する
②答えを想定する
③数字を集める
④数字を比較する
⑤比較した結果をわかりやすく見せる
まず最初に、ステップ1の「問題を設定する」とは何でしょうか。問題とは、「自分は何を解決しなければならないのか」という作業の目的のことです。問題の設定には、「現状」とあるべき姿」の「ギャップ」を正しく認識する必要があります。現状を把握した上であるべき姿が明確になってなければいけないのです。ビジネスでは、問題は与えられるものではなく、自分で設定するものという前提があります。したがって、解くべき問題とただの問題を峻別し、緊急度と重要度のマトリックスを描いて優先順位を策定する必要があるのです。ときには、制約条件を疑うことで、事態の打開を模索することも一案です。
ステップ2の「答えを想定する」とはどういうことでしょうか。もちろん、結論ありきで単に考えるという意味ではありません。答えを想定するとは、仮説を立てることです。仮説を検証し、間違えたら仮説を見直せばよいのです。仮説をを立てているのといないのでは、作業効率に大きな差が開きます。理由としては、ステップ3の「数字を集める」に大きな影響があるからです。集めなければいない数字は何かをしっかり考えるには、問題設定と仮の結論である仮説を立てることは不可欠です。数字を集めるのに、とりあえず集めようは厳禁。目的意識を持ったリサーチが必要です。
数字の集め方には注意点があります。「出所」と「定義」をまずはしっかり押さえることです。数字は意図があって公開されているわけで、ポジショントークの可能性もあります。調べたい母集団と調べる母集団の一致性や、サンプルの偏りなどにも留意しておくのも重要です。
ステップ4の「数字を比較する」のは、特に時系列比較に注意です。ステップ5の「比較した結果をわかりやすく見せる」にも当然つながっているわけで、とりわけトレンド、パターン、変化の3つは異なる点には気をつけましょう。データの見え方・見せ方双方に影響があるからです。
・トレンド…期間のとり方に注意
・パターン…季節性など、雑音が入ったままだとトレンドがわからない(ex7日移動平均線など)
・変化…構造的な変化には重要な示唆
「相関関係と因果関係は別」である点も大きなポイントです。相関分析の結果、AとBの間に何らかの関係があるとしても、それをうまく説明できるロジックやメカニズムがないと、誤った相関性を示すことになってしまいます。仮説検証の際には、背後にある関係性をしっかり考える必要性があります。
ステップ5の「比較した結果をわかりやすく見せる」については、細かいグラフのテクニックもありますが、大枠を押さえておきたいところです。具体的な手法の一つは、「空・雨・傘」です。「空・雨・傘」はストーリー立てて説明する際には非常に効果を発揮する枠組みの一つです。「空・雨・傘」とは、「状況」→「状況の解釈」→「結論」の順でわかりやすく流れを提示できる優れたフレームワークと言えます。レポートの執筆やプレゼンテーションに役立つでしょう。