読むと心が軽くなる一冊:「ゆるく考えよう」ちきりん

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通説とは一風変わった意見が随所に散りばめられていて、読むと心が軽くなる一冊です。「ゆるく考えよう」というシンプルなタイトルが、本質と指針をよく表しています。資本主義の世の中と日本の社会通念に対する”逆説的”な人生指南のアドバイスがたくさん詰まっています。

いや、ゆるく考えましょう。本書の魅力は、日々の考え方を楽に軽快にし、筋が良いことです。
たとえば、
・目標は低く持ちましょう
・人生は早めに諦めましょう
・退屈な時間を楽しもう
・多数派が正しい訳ではない。
といった具合。どれも軽快で受け入れやすい。自分自身に対して期待値をコントロールすることで、メンタルバランスを保ち、多数派や普通であることに流されない生き方

日本が素晴らしい国である理由については、世界各国と相対化することで、我々があたりまえだと思っていることに気づかせてくれる。
・食べ物が美味しい
・決めたことが実行される
・平和で犯罪が少ない
・70年以上戦争をしていない
・世界基準で言えばけっこう平等
・神を信じなくていい自由がある
当然のごとく享受しているものが、世界基準で見ればどれだけ価値があることなのか。世界を旅したうえで、地球儀を俯瞰すると見えてくるのかもしれないですね

また、日本の未来が明るい理由として、以下の三点が挙げられています。
・ユニークバリューがある
・若者が昔に比べ優秀
・世界の中心に近くなる
確かにユニークバリューについては、日本の場合その異質性から十分持っているでしょうし、それを収益化に結びつけるのは下手というのもわかります。BtoB企業の一角を除いて、まだまだマーケティングと海外展開によるポテンシャル発揮ができていない企業もたくさんあるのでしょう。二点目の若者が昔に比べ優秀というのは、やや疑問符がつきます。レジャーランドだったころの大学を私が知らないからかもしれませんが、中学受験の隆盛によって20~30代は勉強した人としなかった人の差は極端に開いてバラツキが大きくなっているのではと考えられます。単純な学力以外の点でも、デジタルな娯楽に時間を取られがちな今の若者に分があるようには見えないです。三点目の、世界の中心に近くなるということについては、アジアのプレゼンスが増していくことがその理由です。これは全くの同感です。中国・インド・東南アジアといった人口の大きな地域との近接性はビジネスチャンスです。物理的、文化的な近さをどう生かしていくかが、日本のビジネスの課題となるでしょう。近年では(足元はコロナ禍が逆風ですが)資生堂、コーセーなど化粧品企業やユニクロなどの躍進が成功例です。とはいえ、その後に記されている日本はイタリアになれというのは、若干クエスチョンではあるけれど、良いところは取りいれたらいいと思います。

外から押し付けられる過剰な欲望を廃して、自分のピュアの欲望を取り戻せというのも、うなずける話。情報カスケード(自分が持っている私的情報に関心を払う代わりに、周りの人の行動を真似することが合理的に思える点にある。みんな自分の知っている情報に基づいて判断していると思っているけれど、実際には先人が知っていると自分が思い込んでいる情報に基づいて判断している。そのため、集団は誤った判断をしてしまう)や、ケインズの美人投票のたとえから逃れるためには、ほんとうは自分は何がほしいのかを再考する必要があります。他人が欲しているから欲するような、広告・宣伝の結果として自らの欲望を喚起させられるような消費行動から脱して、自分のオリジナルな欲望を手に入れることが現代人には大切なのかもしれないですね。

やめることを問題視する道徳観が個人の心を縛っているという指摘も的を射ています。Exit戦略という言葉があるとおり、やめること、撤退することは戦略の一つです。しっかりと区切りをつけて様々な体験をするなど、やめることに前向きな意義づけをしてみるのも一つの考え方です。

最後の辺に書いてあった、運命についてのエッセイもよかった。まとめると、「運命には、戦う方法と受け入れる方法の二つがあり、どちらを選ぶかによって変わるのは結果ではなく経過である。だから、~すべきということで考えるのではなく、どういう人生を送りたいかにより判断するのがいい」。「賢者はいかなる運命であれ、おのれの運命に満足し、自分が持っていないものを乞い願わない」というセネカの言葉があります。運命は戦えとも、受け入れよとも言っていない。ただ、満足すべしと言っているところからすると、運命への対処は単に個人の判断に委ねられているのだから、運命はあなたにどう生きるかという問いかけをしているに過ぎないのでしょう。

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この記事を書いた人

・現役世代を元気にしたいとの思いで新ブログを立ち上げ!
・本は2000冊以上読破、エッセンスを還元いたします
・金融機関で営業・調査部隊双方を経験。
・バックグラウンドは歴史とMBA

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