子供の明るい未来を伸ばすために、私たちが出来ることとは?:「自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学」森口佑介、講談社現代新書

  • URLをコピーしました!

テクノロジーは生活や仕事を便利にしましたが、誘惑への入り口をあなたの手のひらにもセッティングしています。そう、スマートフォンですね。もちろん、あなたの成し遂げたいことを妨害する誘惑はスマートフォンだけではありません。将来の目標のために、目の前にある抗いがたい誘惑を乗り越える力は、誰にとっても必要なものと言えるでしょう。著者の森口佑介氏は、このような自分をコントロールする力は「頭の良さ」とは別の能力と見ています。それは「非認知スキル」です。

知識の量や問題を速く処理する能力などは、専門的には「認知的スキル」と呼ばれています。一方、自信や真面目さ、社交性などは、認知的スキルとは異なる能力として、「非認知スキル」と呼ばれています。その非認知スキルの1つとして、目標を達成するために自分の欲求や考えをコントロールする能力である「実行機能」が特に重要です。子どものときにこの「実行機能」が高いと学力や社交性が伸び、大人になってからも経済的な成功をおさめ、健康状態もよくなることが示されているそうです。

健康な社会生活を営むためには、自分の欲望を抑えたり、物事を計画的に実行したりするのが重要なのはわかりやすい話です。実行機能には、目標のために欲求や感情をコントロールする「感情の実行機能」と、目標のためにくせや習慣をコントロールする「思考の実行機能」の2つがあります。この2つが両輪となって私たちの社会生活を形作っており、仕事の成果や家庭生活の良好さに影響を与えているのです。

子どもの実行機能を十分に発達させるためには、養育者との心身のつながり、家庭環境が特に重要であると考えられています。IQが生涯を通じてあまり変化しないのに対して、非認知スキルは教育や子育ての仕方によって変化する可能性があります。OECDによると、非認知スキルには3つの能力があります。1つ目は他者とうまくつきあう能力で、他人を思いやれる社交的なスキルのこと。2つ目は自分の感情を管理する能力で、自尊心を持つこと。3つ目は目標を達成する能力で、これが実行機能に重なります。小学校入学前の子どもを対象にした多くの研究は、この3つめの能力が子どもの将来に与える影響が強いことを示しているそうです。また、家庭の経済状態と実行機能の関係は非常に重要です。職業や学歴、所得や財産といった社会経済的地位は、言語能力と思考の実行機能などの発達に大きな影響を与えると言われています。その理由の1つは、社会経済的地位が低い家庭では、そうでない家庭よりも子どもがストレスを多く受けることが挙げられます。感情のブレーキの役割をする前頭前野はストレスに弱いため、発達に影響が出てしまうのです。

実行機能の発達に悪影響を与えるものは明確です。虐待はもちろんのこと、親の情緒不安定や、テレビやスマートフォンの受動的な長時間視聴、睡眠不足などが挙げられます。一方、実行機能の発達に良い影響を与えるものについては残念ながらあまりわかっていません。子どもが主体的に頑張ろうとしているときに先回りせずに後ろから支援する子育てや、家の中で家族みんなで生活習慣を守るといった意味での適度に管理的な子育てが大事だ、ということくらいです。長期的な効果については検証が必要ではあるが、子どもの実行機能は、体を動かすテレビゲームや運動、音楽、マインドフルネスなどのさまざまなプログラムで鍛えられる可能性が高いことはわかっているそうです。要は、過干渉は避けたうえで、良好な夫婦仲や生活習慣を保つという一見当たり前のようでいて、どの家庭も必ずしも出来ているわけでもないことが、本当はとても大切なのでしょう。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

あなたの家族や友達にも教えてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

・現役世代を元気にしたいとの思いで新ブログを立ち上げ!
・本は2000冊以上読破、エッセンスを還元いたします
・金融機関で営業・調査部隊双方を経験。
・バックグラウンドは歴史とMBA

目次