「事実はなぜ人の意見を変えられないのか 説得力と影響力の科学」ターリ・シャーロット 、白揚社

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「事実はなぜ人の意見を変えられないのか 説得力と影響力の科学」はいわば人間の考え方の設計図、あるいはその欠片です。人の動かし方を知りたいとき、自分がどう動いているのかを知りたい時、本書は大きなヒントをくれることでしょう。「正論」を掲げるだけでは、人を変えることはできない事実を、あらためて認識することが人の心を動かすための第一歩です。

事実と論理の組み合わせが、人の考え方をもっとたくさん変えられるなら、世界は今よりずっと良くなっているでしょう。しかし、現実は残念ながらそうはなっていません。「事実はなぜ人の意見を変えられないのか 説得力と影響力の科学」という邦題は、額面通りに受け取るとネガティブなトーンです。ですが、元のタイトル、『The Influential Mind: What the Brain Reveals About Our Power to Change Others』を訳すと「影響力を持つ精神:他者を変える脳の力について」となり、少し印象が変わってきます。

人はいかにして他者に影響を与え、他者から影響を受けているのか?私たちはみな、毎日何かしらのかたちで他者に影響を与え、また受けながら生活をしています。私たちはその行為についてどれだけ自覚的なのでしょうか?もっと上手に他人の意見を変えることはできないのでしょうか?他人の考えに影響を与えられるかどうかも、他人の影響で自分の行動が変わるかどうかも、相手の脳の働きに寄り添えるかどうかが決め手になってきます。アイデアを伝える最も効果的な方法のひとつは、それを伝えたい相手と気持ち(感情)を共有することと言えるでしょう。 他人から与えられるものよりも、自分が「選択した」「関わった」という感覚を得られる経験の方が、人は高い満足を得られるのです。大抵の人は「自分は他人に影響を受けにくい」と考えがちですが、実際は無意識下で影響を受けているという点にも留意が必要です。

高度に発達したインターネット社会では、いくらでも自分の意見を補強する情報が手に入ります。しかし、そのことがかえって両極化を招きくのです。なぜなら自分の持っていた世界観に合う情報には賛意を示す一方で、自分の意見を否定するような情報には拒否反応が出るからです。その結果、さらに自分の意見に固執するようになってしまうという循環が起こります。自分の意見を裏付けるデータばかり集めてしまうことを「確証バイアス」と言いますが、このバイアスから逃れるのはなかなか難しいのです。しかも分析能力が高い人ほど、情報を合理化して都合よく解釈しがちであり、「事前の信念」がしっかりしていて、それを支える証拠に対する確信も強いからです。そのため、相手の誤りを正すことから始めて反感を買うよりも、共通の価値判断から出発することを推奨しています。

脳の大部分は、興奮を伝達する扁桃体を中心として、感情を喚起する出来事に対してすぐさま反応を返すようにできています。したがって、他人から与えられるものよりも、自分が「選択した」「関わった」という感覚を得られる経験の方が、人は高い満足を得られるのです。しかもそれを繰り返すと、選択と報酬の関係がより強固になるのです。これは子どもに勉強させたいとき、社員に仕事に励んで欲しいときなどにも応用できます。「こうしなさい」と命令するのではなく、少しばかりの責任を与えて、選択肢があることを当人に意識させるのです。そうすることで、人は「主体性」のなかで幸福に行動するようになるという点は押さえておくべきポイントでしょう。つまり、『人は主体性が制限されていると感じた時、不安になってやる気をなくし、抵抗しやすくなる。逆に主体性を高めてやると、人はより幸せで健康的になり、生産性も上がって話を素直に聞くようになる』

大抵の人は「自分は他人に影響を受けにくい」と考えがちだが、実際は無意識下で影響を受けている点にも留意が必要です。「社会的学習」の問題は、最善ではない決断をさせてしまう可能性があることです。たとえば、ECサイトや口コミサイトのレビューは、この評価がわたしたちの新しい指針となってしまっています。ある実験によると、最初に高評価のレビューを掲載すると、それに続く好意的レビューの数は通常より32%も多くなったそうです。一人の意見でも、後に続くレビューすべてに影響を与えてしまうのです。また自分は正しいと思った回答でも、他の全員が異なる回答をしている場合、自分の意見を変えてしまうことがあります。

考えや思いが、他人の心に引きずられるのだとすると、笑顔で話し、快く振る舞うことになぜ効果があるのかは自明でしょう。『感情は伝染する。感情は他人の気持ちに影響を与えるだけでなく、その行動にも影響を及ぼす』というシンプルな法則なのです。クラウドファンディングで、ネガティブな写真(悲惨な状況を正確に撮影したもの)よりも、ポジティブな感情を喚起する写真(特に笑った顔)が依頼文に添えられている方が資金提供を受けやすいのも頷けるます。印象に引きずられないように立ち止まって考える癖をつける必要もありますし、良い印象を与えて周りの雰囲気を良くすることもまた重要です。

私たちは恐怖を与えることで他人の行動を改めさせようとしますが、実際には取るに足らないフィードバック(「良くできました」と即時に評価するとか「順守率」を示すとか)のほうが、警告や脅しよりもよっぽど効果的に人を行動に駆り立てるという指摘は有益です。つまり、何かをさせる、あるいはさせたくないときに『何かをさせる際には報酬・快楽が、何かをさせない際には恐怖・罰が効果を持ちやすい』のです。人間の意思決定のクセ(バイアスやヒューリスティクス)を自覚しておくかどうかで、人生を良い方向にコントロールできるかどうかはかなりな程度決まっている部分も大きいのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

・現役世代を元気にしたいとの思いで新ブログを立ち上げ!
・本は2000冊以上読破、エッセンスを還元いたします
・金融機関で営業・調査部隊双方を経験。
・バックグラウンドは歴史とMBA

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