「ハニーレモンソーダ」、
妻としゅわきゅんしてきたので
感想をまとめますね。
結論を先取りすると「心配ご無用!」でした。
実写化というとひどい、
つまらない作品になってしまうのでないかと、
原作愛読者でりぼん購読21年目の私は
危惧していました。
しかし、実写映画の「ハニーレモンソーダ」は、
原作を巧みに消化。
一般向けに爽やかな単品映画として
まとまりのいい作品に仕上がっています!
感想をポイントを5つにまとめました(ネタバレが嫌な人はブラウザバックで戻ってくださいね)。(※ブログ統合のため2021年執筆記事の再投稿)
ネタバレ感想①:映画の尺にぴったり収まる見事な構成とアレンジ!
一言で言えば、構成と脚本の勝利。原作はまもなく最新刊である17巻が発売されるご長寿連載ですから、どこまでを、どのくらいやるかが、まさに勝負でした。しかし、実写映画は見事に取捨選択をやってのけて、映画の尺で過不足ない絶妙な構成です。
1年生の内容を中心とするのは予期されていましたが、羽花と両親の関係や文化祭編を思い切って省いたのは英断です。その一方で、劇中で春夏秋冬のすべての季節を描き、111分で起承転結の起伏をしっかり描き出したのはとても良かったです。
ネタバレ感想②キャストに寄せつつ等身大に生まれ変わった石森羽花と三浦界!
マンガのキャラクターから等身大の人間へ
一言で言ってしまえば、羽花ちゃんは原作より強く、三浦くんは原作より弱めており、好判断でした。マンガのキャラクターから等身大の人間へと生まれ変わり、生身のキャストに程よく寄せられたからです。
「三浦係」にまで強くなった羽花ちゃん
たとえば、羽花はいじめられている様子や過去についてはもちろん描写されていますが、原作ほど挙動不審でもなく、オドオドしていません。そこから始めていたら、111分の映画の尺では収まらないですもんね。また、空回りする様や観ていてやきもきするシーンなどもあまりありません。原作ではそうした点からの成長も魅力ですが、映画では一気呵成に弾みをつけて中だるみなしの引き締まった話の展開に繋がりました。
あゆみたち、友達との馴染み方もやや説明調の台詞はあるものの、堰を切ったようにテンポよく馴染んでいきます。界に告白してからも怒涛のペースで急接近していくのは、いかにも現代的なスピード感です。殻を破る描写として、観ていて気持ちが良いですし、役者の吉川愛の個性にも合っています。羽花ちゃんが「三浦係」とさえ言う様は強くなりすぎですが(笑)、映画の文脈では見事に様になってます。
生身の人間としての三浦界がいる…!
一方で、三浦界を、原作の素敵でキラキラした存在から描写を弱めたのも好判断でした。原作のかっこよすぎる三浦界を、等身大の存在に引きずり下ろしたことで、実写映画ではより人間味ある三浦界像を提示できたのは大きいです。原作そのままのかっこよすぎる三浦界は明らかにハードルは高いぞ…と警戒していた原作愛読者の私でも、自然に受けいられました。監督以下スタッフとラウールの尽力によるところ大です。実写映画の関門は、原作をそのまま再現できない点にあります。原作の役柄を咀嚼した上で、映画の登場人物として練り直す必要がありました。
まだ18歳のラウールは明らかに未完成の役者ですが、だからこそ再解釈して演じてみせた三浦界は紛れもなく一人の男の子でした。すべてのセリフと仕草と表情をこなしたわけではありません。しかし、完璧でないからこそ、人間らしさがありました。長身の割には思ったよりも細く、声を張らない芝居のほうが向いている用に見えますし、佇まいには光るものを感じます。きっと、羽花のように原石なのもしれませんね。
ネタバレ感想③:ライティングと映える画作り
的確なライティングが冴える!
状況や心情に応じたライティングは印象的で、何かと様々な作品に辛口な妻もこの点は褒めていました(笑)。どういうシーンなのかを表現する照明の技術は、映画を観客にどう見せたいか、伝えるかの鍵を握ります。特に、”二人の場所”である倉庫で効果的に発揮されていたように感じました。自転車を漕ぐシーンも多く登場します。典型的な手法ではありますが、ともするとのんびりしがちな恋愛映画に、画面の動きや人物の心情の動きを与え、飽きさせない仕組みづくりに一役買っています。
画作りと的確なスポット選び
画作りの観点では、横浜、湘南方面のわかり易い場所が選ばれていました。たとえば、初めに界に出会ったシーン、告白のシーン、ラストシーンでは、みなとみらいの大観覧車が見えるスポット。私も青春時代を思い出す場所です。いかにもコテコテなスポットですが、だからこそ一般向けの恋愛映画として幅広い世代にリーチできるわかりやすさを生んでいます。ロケ地はもっぱら横浜・湘南方面なので、神奈川にお住まいの方はよく見るともっと細かい点も楽しめそうですね。
セリフと組み合わせた画作りも奏功
壁ドンからの鼻に人差し指を当てての「シー」など、セリフと組み合わせた映える画作りが随所に見られます。青空のもとでのキスシーンは、作品のキーカラーである黄色と水色がびしっと映える素敵な画作りでした。作品のモチーフにして、劇中のキーアイテムでもある「ハニーレモンソーダ」は、「キリンレモン」も明らかに主力キャストとして(笑)度々登場しています。さらにはお見舞いのシーンでは「生茶」も劇中の文脈で自然に登場。キリンのCM映画としても役割をしっかり果たしています。
ネタバレ感想④原作ファンを喜ばせる芸の細かさ
原作の素敵なセリフが映画にすんなり溶け込んでて嬉しい
実写映画化にあたり、原作を大幅にカットし、大胆にアレンジをしています。しかし、原作のエッセンスは全く失われておらず、原作と場面、文脈、含意こそ違えど、本編の重要なセリフが巧みに映画のセリフに織り込まれていました。
「石でも お前は宝石なんだよ」、「それがオレの答えだ」、「おまえ以外誰がいんだよ」といった三浦くんの重要なセリフの数々は当然抑えています(わかってるね!)。
「オウムか」、「ご、ご、ごぼうっ!」といった可笑しみのある一幕も、映画の間合いでばっちり入っています。「おはよう」「たすけて」といった羽花と界の絡みも、原作とまた違った色合いの芝居になっています。のどごしが違うため、原作と映画で2度美味しい「ハニーレモンソーダ」です。
羽花の部屋、界の部屋
原作では三浦くんに「病んでるのか?」と言われてしまうくらい、緑いっぱいの羽花の部屋。コルクボードに留められた目標の紙、真面目でがんばりやさんな羽花らしいです。原作通り絵を書く特技も随所で盛り込まれていました。一方で、界の部屋は原作の雑然とした男の子の一人暮らしの部屋から、演出上でしょう、界の孤独を表現するがらんどうの部屋になっています。このように、原作から変えたところ、変えなかったところを色々探してみるのも面白いですね。
ネタバレ感想⑤脇を固める羽花・界の友人・キャスト陣の好演
脇を固める羽花・界の友人・キャスト陣の好演も見逃せないポイントで、周りの人に支えられて主役二人の芝居も成り立っているのだなと実感しました。
遠藤あゆみ役:岡本夏美
原作でも愛嬌抜群のあゆみ。画面に出るたび、髪型、アクセサリー、ファッション、着こなしが違っていて、単純に目に楽しいです。あゆみちゃん可愛すぎ問題で、男どもがあゆみちゃんを奪い合う展開になってもおかしくないくらいです(笑)もちろん、羽花の良き友人として劇中の会話も心地よいです。岡本夏美さん、覚えておこう。
菅野芹奈役:堀田真由
原作でも人格者の恋敵・菅野芹奈。役どころとして難しいポジションですが、見事に演じきってくれました。主人公・石森羽花にとっては、なまじ良い人だけに厄介で手強い元カノでもあります。菅野芹奈さんはおそらくモデルなのでしょうか、佇まいが魅力的でした。感情表現も体当たりの演技で、憎めない敵役にして良き友人として存在感を発揮していました。
高嶺友哉役:濱田龍臣、瀬戸悟役:坂東龍汰
クレバーな印象のイケメン高峰くん、無邪気で天然な瀬戸くんもハマリ役でした。あゆみと芹奈よりは目立っていませんが、要所を締めて、手堅くまとめていたように感じます。片方の方はたしか最近ウルトラマンを演じていましたかね?
総括:見てよかったと思える実写映画
原作ファンの私にとって、実写映画の「ハニーレモンソーダ」は、「見てよかったと思える実写映画」でした。映画の尺に収まる見事な構成とアレンジで、主役二人をキャストに寄せつつ等身大に生まれ変わらせてくれました。しかも、ライティングと映える画作りで、原作ファンを喜ばせる芸の細かさも見せながら、脇を固める羽花・界の友人・キャスト陣の好演で引き締まっています。原作と映画で2度美味しい「ハニーレモンソーダ」。爽やかな味わいをあなたも体験してみませんか?